モンゴル

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

モンゴル遊牧部族のハーンの息子として生まれたテムジン(後のチンギス・ハーン)は、父イェスゲイを毒殺され、仲間や財産を奪っていったタルグタイには命を狙われ、妻ボルテはメルキト族にさらわれ、西夏国で奴隷として囚われる・・・と数々の辛酸をなめる。しかし何度でも立ち上がり力をつけたテムジンと、幼い頃からの盟友(アンダ)ジャムカが決着をつける日がやってきた。

思ったこと

浅野忠信はすんごいモンゴルの人みたいだった!
モンゴル語の発音が正しいのかどうか分かりようもないが、違和感なく同化しているように見える。
幽閉されているときの、能面のように無表情で鬼気迫る顔、土壁みたいな皮膚が記憶に焼きついた!
このパートは監督の創作だそうで、当然見たことも聞いたこともないテムジンの状況に、え?どうなるの?と、ちょっととまどいつつもわくわくしたよ。
しかし、『蒼き狼 地果て海尽きるまで』といい、自国の英雄を日本人に演じられてしまうのって、モンゴルの人たちにとってどうなんだろう・・・?

ストーリーはスピーディーに展開しダイジェスト的にさくさくと進むが、迫力のある風景や撮影のおかげで、物足りなさを感じさせない。
広大な草原に砂漠、巨大な岩、どこまでも広がる空・・・。
ロケはモンゴルだけでなく、カザフスタン、中国の内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区などで行われたらしい。
いつかきっと行ってみたいな。

物語は、少年テムジンが父イェスゲイとともに嫁探しに行くところから始まる。
モンゴル族における良い妻を選ぶポイントとは「顔が平らで、目が細く、足が丈夫であること」なんだって。
うん、なんだか私でもいけそうな気がしてきたぞ・・・。
「ひとめで妻と分かった」だなんて、お・と・こ・ま・え〜!
キュンときてしまったよ! 9才のまん丸顔の少年に。

テムジンは、よっぽどボルテのことが好きだったんだね〜。
なんか常にボルテのことを考えている。
すべてを奪われ命まで狙われてても、考えていることは「嫁を迎えに行かなきゃ」だし。
さらわれたボルテを取り返すため、盟友ジャムカに「モンゴル人は女のために戦などしない」とか言われつつも、強引に嫁奪還の協力をとりつけるし。
牢の中から告げる言葉も「これを・・・ボルテに渡してくれ・・・」。
大人になったボルテの容貌は、ディズニー映画『ムーラン』を思い出させた・・・んーエキゾティック。
メルキト族にさらわれている間に生まれた子供ふたりを見て、「今日から俺が父だ」と躊躇無く告げるテムジン、ふところ深〜!
9才と10才で出会い、身ひとつの貧乏になっても、殺されそうになっても、異部族や異国に囚われても、とにかく互いを求め続けるテムジンとボルテ。
シンプルな気持ちだからこそ強いのか・・・その一途さがうらやましい。
しかしテムジンはこの後何人もの妻をめとるはずだが・・・。

ジャムカとの決戦は、スペクタクル的に盛り上がった!
二刀流の騎馬武者たち、悪役っぽい黒い鎧で容赦なく突進する・・・カッコイー!
弓矢隊がずらっと姿を見せたところにも興奮!
ごく間近な視点から撮っているため何がどうなっているのか分かりにくいときも多いが、その血なまぐささと混乱が戦の迫力を増す。
でもねでもね、身ひとつだったテムジンがいったいどうやってこれだけの軍団を集めることができたの〜??
その部分は省略してはいけなかったんじゃ・・・。

モンゴル
Mongol

(2007年 ドイツ/ロシア/カザフスタン/モンゴル)
監督・脚本/セルゲイ・ボドロフ
出演/浅野忠信(テムジン)
   スン・ホンレイ(ジャムカ)
   クーラン・チュラン(ボルテ)
   アマデュ・ママダコフ(タルグタイ)
   バー・セン(イェスゲイ)
   アリヤ(ホエルン)
   オドニャム・オドスレン(少年時代のテムジン)
   バエルトセッセグ・エルデンバット(少女時代のボルテ)
   アマボルド・チェムシンバラール(少年時代のジャムカ)
公式サイト

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この道は母へとつづく

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

孤児院で育った6歳のワーニャは、裕福なイタリア人夫婦の養子になることが決まった。しかし、すでに養子にもらわれていったムーヒンの母が現れたことで、ワーニャは本当のママに会いたい気持ちを抑えられなくなり、孤児院を脱走して母を探しに旅立つ。

思ったこと

「本当のママに会いたい」という一途な思いいっぱいに、幼いワーニャは、孤児院長や仲間が説得するのも聞かず、懸命に文字を覚えて資料を盗み読み、少ない手がかりだけを持って外の世界へ飛び出す。
孤児を里親に仲介して大金の手数料を稼いでいるマダムと手下のグリーシャは、執拗にワーニャの跡を追う。
とにかく必死なワーニャはけなげで、母を求めるひたむきな気持ちにはグッとくるけど、「生みの親より育ての親」と言ってあげたくてしょうがなかったよ。
本当のお母さんがそんなにいいもんかどうか分かんないよ〜って。
だってどんな事情があろうと、ワーニャを孤児院に置いたまま迎えに来ていないのは事実だし。
里親のイタリア人夫婦は良さそうな人たちだったしさー。
しかしこれって“本当の親に優るものはない”というテーマなのかな。
実話を基にしたストーリーらしいが、果たして現実ではその後どうなったんだろう・・・。

ワーニャ役の子は、愛くるしい顔立ちながら、意思の強さを感じさせる眼差し。
子供ひとりでいるのを怪しまれないよう、機転をきかせて周りの人を利用する賢さ。
ストリートチルドレンや、追ってきたグリーシャに立ち向かう根性。
癖かな、しょっちゅうフゥンとのどの奥で鳴らすような相づちを打つのがカワイイ!
ああ〜守ってあげたくなる〜(私は本当のママじゃないからダメか)。

おそらく孤児院で育って、ほかに行き場がないまま不良化している年かさの子たちも興味深い。
いつも幼い子たちの面倒をみている優しいナターハ。
極寒のなか、娼婦業をやってるらしいイルカはミニスカ生脚、まっすぐで棒みたい。
仲間たちのリーダーであるカリャーンは、皆が稼いできたお金をとりまとめている。
ワーニャがお金をごまかそうとしたのが発覚したとき、カリャーンは自分がいかに本当の親からひどい扱いを受けたかという経験を話し、おとなしくイタリア人夫婦のところへ行って幸せになれと諭していて、乱暴者なだけではない、同じ境遇の者を思う気持ちを感じてしんみりした。
その後、きっちりベルトで打つという罰は与えられたけど。
イルカがワーニャを助けようとしたのは、自分にはかなえられなかった“本当の親と幸せに暮らす”という夢を、もう一度見たかったからだろうか・・・。

原題は「イタリア人」という意味で、イタリア人夫婦の養子になることが決まったワーニャを、仲間たちが羨望交じりで「イタリア人」と呼ぶことからきている。
邦題はベタな感じではあるけれど、なかなか合っていると言えるんじゃないかな。

この道は母へとつづく
Итальянец/The Italian

(2005年 ロシア)
監督/アンドレイ・クラフチューク
出演/コーリャ・スピリドノフ(ワーニャ)
   マリヤ・クズネツォーク(マダム)
   ニコライ・レウトフ(グリーシャ)
   ダーリヤ・レスニコーワ(ムーヒンの母)
   ユーリイ・イツコーフ(孤児院長)
   デニス・モイセンコ(カリャーン)
   ポリーナ・ヴォロビエワ(ナターハ)
   オルガ・シュヴァロワ(イルカ)
   ディマ・ゼムリエンコ(アントン)
公式サイト

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春のめざめ

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

19世紀末、帝政時代のロシア。16歳の貴族の子弟アントンは、住み込みで家事を手伝う少女パーシャと惹かれ合う。そんなとき、隣の家に住む年上の令嬢セラフィーマに出会い、その美しさに憧れを抱く。ふたりの女性の間で揺れ動くアントン。

思ったこと

油絵が動く!
予告編を見たときから、その美しさ不思議さに興味をひかれた。
モネやルノワールなど印象派絵画を彷彿とさせる。
重厚感と透明感の同居。
現実と空想の区別が曖昧になって、溶け合い広がっていく表現にぴったりだ。
ぼわ〜んとした、夢見がちな近視の人が見た世界とも言えるかも・・・。
27分という上映時間は、観る前には「短いな〜」と思ったけど、とにかく映像が濃いぃので、かなり満足感が得られます。

このアニメーションは、“ガラス絵手法”という作り方だそう。
指に付けた油絵の具でアクリル板の上に絵を描き撮影し、ちょこっと消して次の動きを描き足して撮影し・・・という、果てしなく気の遠くなりそうな作業。
画面の隅々の細かいところまで生き生きと動いているし、全体が大胆にメタモルフォーゼしていくところなんて、非常に緻密な計算のもとに行われたんだろうな〜と感嘆しきり。
ぱーっと光が射したり、火事の炎が迫ってきたりする様子は、絵画ではなく映像だからこその効果が出ていると思った。
スズメやヒヨコがかわいかったのもお気に入り。

セラフィーマは確かに魅力的。
こちらを振り向いて、天使のような姿に変化していく様は圧倒的だ。
「女神!
 君は稲妻。僕を貫いた。
 君は天井の花。」
・・・などと詩をしたため、恋の熱に浮かされているアントン。
でも、セラフィーマを賛美する一方で、身近にいる優しく温かいパーシャのことも好き。
本人の中ではまったく矛盾していないのね・・・。
こんなに真っ直ぐ気持ちをほとばしらせることができるなんて、ちょっぴりうらやましいような。
とどまるところを知らない妄想の爆発も、思春期らしくてほほえましい。

裕福で美人でとりまきの男性もいっぱいいそうなセラフィーマが、なんでこんな貧弱そうなアントンを相手にするんだろう・・・と思わないでもなかったが、セラフィーマにもいろいろと屈託があって、アントンみたいなピュアな少年に癒されるのかもしれないなー。
しかし、セラフィーマは「年を取りすぎてしまった・・・もう25歳だから」と言うが、25歳でそんなことを言われちゃったら、私はどうすればいいのっ!
もしもかわいい少年に「君は女神・・・」みたいなポエム手紙をもらったら・・・ものすごく爆笑してしまいそうな私は、シリアスな恋愛劇の主人公にはなれません。

春のめざめ
Моя любовь/My Love

(2006年 ロシア)
監督・脚本/アレクサンドル・ペトロフ
原作/イワン・シメリョフ
音楽/ノーマン・ロジェ
公式サイト

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