華麗なるアリバイ

お気に入り度 ★★☆☆☆

こんな話

上院議員パジェス夫妻の邸宅で行われる週末のパーティに集った9人の男女。医師ピエールの妻、愛人、元恋人、元火遊びの相手が一堂に会し、微妙な雰囲気が漂う。そんな中、プールでピエールが殺されて、居合わせた人々に嫌疑がかかるが・・・。

思ったこと

原作がクリスティでタイトルにアリバイという言葉が入っていたら、きっとトリッキーなミステリだろうと想像してしまうのは当然だと思うけど、これって・・・。
昔の映画ならともかく、現代に通用するのー!?
予告編では、「ピエールが殺されて残りの8人が容疑者となるが、いずれにも動機とアリバイがあった」と言っていたように思うが、そういう話じゃなかったよねぇ~??
少なくとも生意気な女学生クロエには動機が全然なかったというか、何のために登場しているのかも謎であった。
皆のアリバイもちゃんと調査している様子がなかったし・・・。
怪しい人物はいくらもいるんだけど、推理を楽しむ気分にもいまいちならないよ。

それにしても、フランス人のただれた男女関係よ。
(でも原作はイギリスってことは、いずこも同じってこと?)
ていうか、何でこんな複雑な関係にある面子を集めようと思ったのか・・・。
パーティを主催したエリアーヌ、「いつかこんなことが起きると思った」ってあんた・・・。

女性たちの中で、飛び抜けて美しいのが、ピエールの元恋人である女優のレア。
顎から首にかけてスッと伸びるライン、なだらかな背中の曲線などが美しすぎて、自分と同じ生き物であることが信じ難いくらい。
その一方で、エステルなどはまあきれいだけど、同じ生き物だと感じられるレベルの親しみやすさ。
エステルが館にやってきた時の、青いカットソーにピンクのパンツは、何てことのないゆるやかなシルエットだけど、妙におしゃれに見えました。
この女優さん、サルコジ大統領夫人のお姉さんなんよね、本物のセレブ!
しかしこのピエール、何故にそんなにモテるのか。
そして書いていたメモは結局何だったんだ?

刑事たちが無能過ぎて笑えた。
極めつけは「最大のアリバイは・・・」という発言。
騙されすぎだろー!

華麗なるアリバイ
Le Grand alibi/The Great Alibi

(2008年 フランス)
監督・脚本/パスカル・ボニゼール
原作/アガサ・クリスティ
出演/ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ(エステル)
   ランベール・ウィルソン(ピエール・コリエ)
   アンヌ・コンシェ(クレール・コリエ)
   ミュウ=ミュウ(エリアーヌ・パジェス)
   ピエール・アルディティ(アンリ・パジェス)
   マチュー・ドゥミ(フィリップ)
   セリーヌ・サレット(マルト)
   アガット・ボニゼール(クロエ)
   カテリーナ・ムリーノ(レア・マントヴァニ)
   ダニー・ブリヤン(ミシェル)
   モーリス・ベニシュー(グランジュ刑事)
   エマニュエル・リヴァ(ジュヌヴィエーヴ・エルバン)
公式サイト

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レスラー

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1980年代に人気絶頂だったレスラー、ランディ・“ザ・ラム”は、20年以上経った現在、スーパーでアルバイトをしながらもプロレスを続けていた。試合の後に心臓発作で倒れ、手術を受けて激しい運動はもうできないと宣告されたランディは引退を考える。ひしひしと感じる孤独を打ち明けられる相手は、なじみのストリップダンサーのキャシディだけだ。

思ったこと

とうに盛りを過ぎたレスラーの後ろ姿は、息切れをしてるようで、哀愁が漂う。
身体を酷使して、無理をして、祖末なトレーラーハウスの家賃も払えなくて、バイト先では上司にバカにされて、細々とビデオやグッズを手売りして、なおプロレスラーとしての自分に誇りを保っているランディ。
でも子供たちには人気なのね。
レスラー仲間やファンからは愛されてるのね。

試合の前に、レスラーたちがそれぞれ盛り上げるための段取りを相談し合ってるのはおもしろかった。
ホームセンターで攻撃に使えそうなものを買い物してるのもなんかほほえましい。
プロレスラーって打たれ強くなきゃいけないんだね・・・段取り通りの攻撃で本当にやられてしまってはダメなんだもんね・・・大変だ・・・。
仕込んでおいたカミソリで自分を切って流血を演出したりとか。
なかでもインパクト大だったのはステープラー・ガン!
でかいホッチキスですな。
こういうものを皮膚に打ち込むなんて・・・ぞっとするー!
この武器を持ち出した対戦相手ネクロ・ブッチャーは、自分の額に紙幣を留めてましたけど・・・こわー!
これ、まさか本当にやってるんじゃないよね・・・CGとかだよね・・・?

孤独を感じたランディが思い出したのは、今まで父親らしいことをしてこず、自分を憎んでいる一人娘のステファニー。
なんとか関係を修復するために服をプレゼントしようとするのだが、ランディが選んだのは「ステファニーのSがついている」安っぽい黄色のジャンパー・・・えぇーまさかそれがプレゼント!? どーだろう!? すごいハラハラドキドキしてしまうシーンだった。
ファッションに疎い不器用な父親って感じで、ある意味かわいらしいとは言えるけどー。
キャシディがついてきてくれて本当に良かったー!
娘に心からの思いを語り、新しい関係が始められそうになったというのに、失敗してしまうランディ・・・ステファニーだって本当は父親を信じたい愛したいだろうにまた裏切られてしまったという絶望感・・・確かにランディがダメ父で自業自得な感じなんだけど・・・切ないね。

宿敵アヤットラーとの20年ぶりの対戦に臨むランディが、大歓声の中、ホールに出てくる瞬間をカメラが正面からとらえる。
実生活での、控え室での、人生の悲哀を背負った孤独な男が、ここぞとばかりに輝く。
そう、ランディが生きられる場所はここだけなのだ。
限界に近づいた肉体はもう耐えられないかもしれないけど、精神を生かすにはここへ向かうしかないのだ。
最後の力をふりしぼるかのような“ラム・ジャム”に目頭が熱くなった。

レスラー
The Wrestler

(2008年 アメリカ/フランス)
監督/ダーレン・アロノフスキー
出演/ミッキー・ローク(ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン)
   マリサ・トメイ(キャシディ/パム)
   エヴァン・レイチェル・ウッド(ステファニー)
   マーク・マーゴリス(レニー)
   トッド・バリー(ウェイン)
   ウェス・スティーヴンス(ニック)
   アーネスト・ミラー(アヤットラー)
   ディラン・サマーズ/ネクロ・ブッチャー
公式サイト

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エトワール

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

300年以上の歴史をもつパリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちの素顔をとらえたドキュメンタリー。幼いときから厳しいレッスンと競争を耐え抜き、頂点である“エトワール”の座についた者、目指す者たちが語る真実の言葉。

思ったこと

パリ・オペラ座バレエ学校では、8才から18才までの子供たちが毎日厳しいレッスンに明け暮れ、さらに毎年進級できる人、バレエ団に入団できる人の枠を巡って競争し続けているという。
入団してからも、カドリーユ、コリフェ、スジェ、プルミエ・ダンスールという階級があり、頂点であるエトワールを目指してしのぎを削る。
よっぽどの信念と精神力がないとできないこと・・・。
生まれついての容姿とか素質はもちろん、それ以上に並々ならぬ努力が積み重ねられてきているということに恐れ入ってしまう。

そういう競争を勝ち抜いてきたダンサーたちは、意外にもまともな・・・と言ったら悪いけど、バランスのいいさわやかな語り口の人ばかりだった。
バレエ三昧で競争にさらされ続けているというある意味異常な環境で成長してきたら性格もちょっと偏ってたりしても仕方ないと思うんだけど、極めた人というのは人格も磨かれるのかしらん・・・。
「口下手だからダンサーになった」と言いつつ滔々と喋る男性には笑っちゃった。

「修道女になりたかったけど、それには性格が俗っぽすぎたのね」と語る女性がいて、「何かに情熱のすべてを捧げたかった」という言葉に胸を打たれた。
私が憧れていたものはこれだー!と思った。
思い返すに、私は常に“ストイックであること”に憧れを抱いてきたのに、自分自身がまったくもって全然ストイックに生きられないことに失望しているのだった。
修道女もいいなと思ったことあるもんね・・・しかし、毎日3時半起床で、聖なる読書しかしてはいけない(つまりマンガとか読めない)と聞いて、「無理です」とあっさり断念した。
一流のバレエダンサーであるためには、夜遊びもお酒もカロリーの高いおいしいものとも無縁に生きていかなくてはならない。
でも「犠牲とは思わない」と語るすがすがしい表情。
ストイック・・・ストイック・・・どうしたらストイックに生きられるんだろう!?
怠け者な自分に本当にがっかり・・・。

エトワールというバレエ界で最高峰の地位についた人って、姿は美しいし、当然技術もすごいんだろうし、皆から憧れられる存在なわけだし、自分のことを好きでいられるんだろうな〜などと思ってしまうが、「自分の体に満足しているダンサーなんていない」「演技に満足できたとしても70%くらい」なんだそう。
厳しい世界・・・。
綺羅星のようなダンサーたちの後ろにいる、そうなれなかったたくさんの人たちのことを考える。
ベッシー校長が「普通の勉強も大切です。ある日怪我をして踊れなくなったとき、バレエしか知らなかったらどうなるの?」という言葉が重く響く。

しかし、舞台に立つということは、他では代えられない麻薬的な喜び、多くの人に夢を見せるという特別な体験が得られるんだろう。

私はまったく詳しくないんだけど、バレエファンならもっと楽しめたんでしょうね。
ステージや練習風景の様子は期待したほどは多くなかった・・・もっともっと見たかったな〜。

エトワール
Tout pres des étoles

(2000年 フランス)
監督/ニルス・タヴェルニエ
出演/ローラン・イレール
   マリ=アニエス・ジロ
   クレールマリ・オスタ
   マニュエル・ルグリ
   ミテキ・クドー
   ギレーヌ・テスマー
   ノエラ・ポントワ
   アニエス・ルテステュ
   ニコラ・ル・リッシュ
   オーレリ・デュポン
   ウィルフリード・ロモリ
   エリザベット・プラテル
   ジョゼ・マルティネズ
   ブリジット・ルフェーブル
   クロード・ベッシー
   イリ・キリアン
   モーリス・ベジャール
   藤井美帆

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シェルブールの雨傘

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

港町シェルブールで愛を語り合う若きカップル、傘屋の娘ジュヌヴィエーヴと自動車修理工ギイ。しかし、ギイはアルジェリア紛争に徴兵される。悲しみにくれながらも、出兵前夜、ふたりは結ばれた。母とふたりで営む雨傘店の窮状を助けてくれたのは、宝石商のカサールだった。

思ったこと

オープニング、雨がそぼ降る港町を行き交う色とりどりの雨傘に、すっかり心をつかまれる。
全編を彩る美しい色彩と詩情あふれる音楽。
すべてのセリフが歌でつづられるので、もしかしてちょっと飽きちゃうかもという懸念も杞憂に終わった。
一瞬一瞬が美しい、珠玉の映画でした。
哀切なテーマ曲が耳に残る・・・。

Deneuve02_3カトリーヌ・ドヌーヴが演じるのは、17歳のジュヌヴィエーヴ。
迫力満点の近寄りがたい美人女優さんのイメージだったが、こんなに若くて初々しいときもあった!
つつましい恋に心震わせる、庶民的な傘屋の娘役、いじらしいな〜。
それにしても、恋人ギイが出征したら、けっこうすぐに次の決断しちゃったよね・・・。
10代にとっての2年間って永遠にも等しく感じるのかしら。
今の私には、2年間なんてたいして長くないけど・・・。

ジュヌヴィエーヴの母、エムリー夫人は、若いふたりの結婚に反対する憎まれ役だが、まぁ〜「若すぎる!」と反対する気持ちはちょっと分かるよね。
この人、ずばずばとデリカシーのない発言が多いけど、にくめない。
表情豊かに、傘屋経営の窮状を訴える様はおもしろいし。
実はカサールのことを好もしく思っていたんじゃないの〜?と、ちょっとやきもき。
なんか自分、若いふたりではなくて、すっかりこっち側に来てしまったということを実感・・・。

インテリアやファッションを見るのも楽しい!
ギイと伯母さんの住む部屋は、オリーブ色の壁に赤いカーテン、目の覚めるような空色の壁。
ジュヌヴィエーヴ母子の家は、緑とピンクのストライプ、ピンクが効いてる薔薇や木苺の壁紙と、ピンク基調。
こんなに鮮やかな色をいくつも使っていながら、全体が落ち着いた調和を保っているのは、さすがおしゃれの国フランスと言うべきか。
真似したい〜でも絶対失敗しそうだな・・・。

シェルブールの雨傘
Les Parapluies de Cherbourg/The Umbrellas of Cherbourg

(1964年 フランス/西ドイツ)
監督・脚本/ジャック・ドゥミ
音楽/ミシェル・ルグラン
出演/カトリーヌ・ドヌーヴ(ジュヌヴィエーヴ)
   ニーノ・カステルヌオーヴォ(ギイ)
   アンヌ・ヴェルノン(エムリー夫人)
   マルク・ミシェル(カサール)
   エレン・ファルナー(マドレーヌ)
   ミレイユ・ペレエ(伯母エリーズ)
声/ダニエル・リカーリ(ジュヌヴィエーヴ)
  ジョゼ・バステル(ギイ)
  クリスチャンヌ・ルグラン(エムリー夫人)
  ジョルジュ・グラネス(カサール)
公式サイト

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ロシュフォールの恋人たち

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

ロシュフォールの町に住む美しい双子姉妹、ソランジュとデルフィーヌ。いつかパリに行って成功することことを夢みていた。ふたりの母が切り盛りするカフェに、明日から始まるお祭りのためにやってきた、旅芸人のエチエンヌとビルが訪れる。水兵マクサンスは、まだ見ぬ理想の恋人の絵を描いていた。

思ったこと

オープニングの群舞で、黒いパンツを見せながら真ん中で踊っているミニスカの女の子、これがドヌーヴなのかな〜?と思ってた。
ダンス、びみょ〜。
昔のミュージカルだからかしら・・・。
ファッションもかなり微妙な感じのものが散見される・・・。

Deneuve01そしたら、「私たちは双子座の姉妹♪」と美しい双子姉妹が登場し、歌い踊る。
ミファソラ〜ミ〜レ レミファソソソレド♪
さすがスター女優!な華やかさ。
楽しい〜!!
ばさばさのまつげは本物かしら・・・?
「カトリーヌ・ドヌーヴはミュージカル女優だった!」という触れ込みだったから、てっきり歌もうまいのだとばかり感心していたけど、実は吹き替えだそうです。
ソランジュの最初のピアノと歌は本人かな・・・なんか下手だったんだけど・・・ドレミも間違っていた気がする。

「美人だね」「皆そう言うわ」
この返し! 言ってみてぇ〜!
「ウソで固めた薄情なあなたとはお別れよ♪」と、すごいアグレッシブに恋人に別れの言葉を歌うのも、なんかカッコイイ。

カトリーヌ・ドヌーヴの実の姉だというフランソワーズ・ドルレアックのことはあまり知らなかったが、お揃いの服を来た双子としてドヌーヴと並ぶと、肌色の濃さやそばかすが目立ち、ちょっと険のある顔つきが甘〜いドヌーヴとはまた異なった魅力。
この映画の直後に急逝したのだそう・・・こんなに若くてきれいなのに(合掌)。

若い水兵マクサンスは、まだ見ぬ理想の恋人を追い求め、美女の絵を描き、彼女のことなら朝まで語れると言う。
そういう男、秋葉原とかにいっぱいいそう〜(笑)。
でも、金髪の美青年が言うとキモくない〜(笑)。

ソランジュが地面に落ちた鞄の中身を拾おうとしたとき、手伝ってくれたピンクのポロシャツの男。
なんか運命の出会いっぽい演出なんだけど、にやけた中年男イヤ〜ンと思っていたら、タップダンスを踊り始めて俄然輝き出す。
ちょっと眠くなっていたけど、ぱっちり目が覚めたよ!
後から、かの有名なジーン・ケリーだと知って納得。

お話自体はどってことない恋のすれ違いで、あの人とあの人、この人とこの人、その人とその人が最後にくっついてハッピーエンドなんだろうなぁ〜と丸分かりで、その通りに展開する。
途中でちょっと中だるみ。
こんな他愛ない内容だったら、127分も使わないで、90分くらいにまとめてくれてたら良かったんじゃないかな〜。
バラバラ殺人のエピソードとか必要か?

ロシュフォールの恋人たち
Les Demoiselles de Rochefort/The Young Girls of Rochefort

(1967年 フランス/アメリカ)
監督・脚本/ジャック・ドゥミ
音楽/ミシェル・ルグラン
出演/カトリーヌ・ドヌーヴ(デルフィーヌ)
   フランソワーズ・ドルレアック(ソランジュ)
   ジーン・ケリー(アンディ・ミラー)
   ジョージ・チャキリス(エチエンヌ)
   グローヴァー・デイル(ビル)
   ジャック・ペラン(マクサンス)
   ダニエル・ダリュー(イヴォンヌ)
   ミシェル・ピコリ(シモン・ダム)
   ジャック・リベロール(ギヨーム)
公式サイト

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バシールとワルツを

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

アリ・フォルマンは、20年前にレバノン戦争に従軍していたときの記憶がほとんどなかったが、当時のことを悪夢にみるというボアズの話をきっかけに、フラッシュバックを体験した。ベイルートで虐殺事件が起きたとき自分は何をしていたのか・・・当時の仲間らを訪ねて話を聞き、だんだんと記憶を取り戻していく。

思ったこと

い、犬! 犬コワ〜イ!
目が爛々と光り全身に怒りをたぎらせた26匹の犬たちが、あらゆるものを蹴立てて、こちらに向かって走ってくる!
チワワにさえびくびくしてしまう私は恐怖にひきつると同時に、アニメーションの躍動感にがっちりと捕らえられてしまったオープニングだ。
そして、なぜ“26匹”なのか、という理由に強いインパクトを与えられたときから、主人公の心の迷宮へと一緒に出発することになる。

リアルで細密な背景のなか、彩色した木版画みたいな質感の人物が動き喋るアニメーション。
実在らしき人物が次々と出てくるし、内容としてはシリアスなドキュメンタリーなのだけど、何故アニメという表現方法なのか・・・昔の戦場を回想していく方式で、心の中に存在しているものまで含んだ映像を描き出すこと、凄惨な光景を一歩引いて冷静に見られるようにすること、が目的なのかな〜と思った。
冒頭の犬をはじめとし、幻想シーンは怖く美しく、アニメ的な快楽も十分味わえる。
タイトルの元にもなっているシーンは圧巻だ!

1982年、イスラエル軍はレバノンに侵攻してPLO(パレスチナ解放機構)と戦った。
そしてベイルートのサブラ・シャティーラ難民キャンプで、ファランヘ党により民間人を含む大量虐殺事件が起こる。
バシールとは、親イスラエルだが暗殺されてしまったレバノンのバシール・ジェマイエル大統領のことだ。
私は歴史背景を全然分かってないまま観たのだが、ところどころ理解が追いつかないところがあっても、全体的にはグッと集中力をつかまれたままだった。

語り手で監督でもあるアリ・フォルマンは、自分の記憶が消えている謎を探っていく。
そこから何が出てくるのか・・・とてつもなく怖ろしいものが隠れているのではないか・・・でも知らないままではいられないミステリーだ。
人間の記憶って本当に不思議。

断片的に語られていくエピソードが、戦場体験がそれぞれの心に刻印したものをうかがわせる。
家族連れが乗ったベンツを蜂の巣にした男の話。
自分だけが生き残ってしまったことに罪悪感を抱き続ける男の話。
周りの光景に対して映画を見ているかのように距離を置き自己防衛していたカメラマンが、あるとき悲惨な状況にある馬たちを目にして、いきなりすべてが現実として迫ってきたという話・・・。

戦争という異常な場では、強者に見えるほうもひどい恐怖と混乱に陥っている。
被害者になるのももちろんイヤだけど、自分がいつ加害者側に回るかも分からない、直接の加害者にならなくとも傍観者や幇助者になっているかもしれない・・・という恐ろしさをひしひしと感じた。
イスラエルって、女性にも徴兵があるんだよねぇ・・・。
こんなことは感じたくない、だから、だから戦争のない世界をひたすら願うしかない。

バシールとワルツを
Vals im Bashir/Waltz with Bashir

(2008年 イスラエル/フランス/ドイツ)
監督・声/アリ・フォルマン
声/ロン・ベニ・イシャイ
  ロニー・ダヤグ
  ドロール・ハラジ
  イェヘズケル・ラザロフ(カルミ)
  ミッキー・レオン(ボアズ)
公式サイト

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ぼくの大切なともだち

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

骨董商のフランソワは、自分の誕生日のディナーで、友人と思っていた人々から「おまえの葬式には誰も行かない」「あなたには友達がいない」と言われ、ショックを受ける。手に入れたばかりの高価なギリシャの壷を賭けて、10日以内に「親友がいる」ことを証明しなければならない。焦ったフランソワは、たまたま出会ったタクシー運転手ブリュノに、どうすれば友達が作れるか習うことに。

思ったこと

フランス人、しかもけっこう年輩の大人たちが、友達がいるかどうかをこんなに云々するとは意外だった。
恋人や家族がいれば平然としている人たちなんだとばかり思ってた〜。

皆がフランソワを「友達いない」と責めるから、「いいじゃん!友達いなくっても!」とキレたくなる。
そんなん人それぞれでしょ(私自身はけっこう気にするが・・・)。
だいたいさー、誕生日パーティで本人に言うことか〜?
そっちのほうが性格悪いよ!
それに、初対面の人と気軽に雑談できるのと、心からの友人を作るのとは、まったく別の話だと思うんですけど・・・。

ブリュノは雑学王で、何かといえば知識を披露する。
夢はTVのクイズ番組に出ること。
『最高の人生の見つけ方』でのモーガン・フリーマンもそういうキャラだったが、この共通点には何か意味があるんだろうか?
正直ウザイ・・・と私は思うのだが、感じがよくて友達が多いキャラとして扱われていたのが腑に落ちない・・・。
それにブリュノは親離れできていないと見た(本人は「両親が子離れしていないんだ」などと言っていたが)。
フランソワがやったことは確かにヒドイけど、諾々と従うブリュノもブリュノだ。
どちらにも感情移入しづらいな・・・。

「クイズ・ミリオネア」というTV番組は世界あちこちにあるんだね。
私は見たことなかったのだけど、ふ〜ん、これがみのもんたか・・・(←違う)。
こんなルールで大金がもらえるんだ〜。
番組中の、フランソワとブリュノのシリアスな会話は、緊張感があって可笑しかったです。

そんなわけで、全体的に釈然としないストーリーだった。
でもけっこう楽しんだ。
不器用なおじさんたちの右往左往っぷりがおもしろいのかな。

ブリュノが大切にしている言葉として、『星の王子さま』の一節が引用される。
「君にとって僕は沢山いるキツネの1匹。
 でも互いになじめば大事な存在となる。
 君は僕のたった1人の人。
 僕は君のたった1匹のキツネ。」
おおー、改めて聞くと、いいね。
あと『星の王子さま』では、「どこかの星で君が笑っていると思えば、星を見上げたとき、すべての星が笑っているように見えるよ」(ウロ覚え)というところに、胸をキュッとつかまれるような、温かいような、もの寂しくて泣きたいような気持ちになる。
似た感じを引き起こす歌に、『天空の城ラピュタ』の「あの〜どれかひとつに〜きみがいるから〜♪」とか、谷山浩子の「それは〜どこか〜宇宙の果ての〜知らない星からの長距離電話〜♪」とか。
銀河の果てで、まだ会ったことのない親友が待っているような気がする・・・。
あ、いやいや、遠い星にじゃなくて、フランソワとブリュノのように身近なところで友達を見つけなきゃ。

ぼくの大切なともだち
Mon Meilleur Ami/My Best Friend

(2006年 フランス)
監督/パトリス・ルコント
出演/ダニエル・オートゥイユ(フランソワ・コスト)
   ダニー・ブーン(ブリュノ・ブーレー)
   ジュリー・ガイエ(カトリーヌ)
   ジュリー・デュラン(ルイーズ)
   エリザベート・ブールジーヌ(ジュリア)
   ジャック・マトゥー(ブリュノの父)
   マリー・ピレ(ブリュノの母)
   アンリ・ガルサン(ドゥラモット)
   ジャン=ピエール・フーコー(クイズ司会者)
公式サイト

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美しすぎる母

お気に入り度 ★★☆☆☆

こんな話

プラスティックの基となる合成樹脂ベークライトを発明したことで大富豪となったベークランド家。上流階級のつきあいに溶け込めなかったバーバラを捨て、ブルックスは息子アントニーのガールフレンドと一緒に家を出る。残された母と息子が偏った愛情の果てに迎えた、実際の事件を映画化。

思ったこと

最初から最後までよく意味が分かんない映画だったぁ〜。
早く終わんないかなぁ〜ともぞもぞと耐えた時間は長かった。
そもそもタイトルからして謎だったしな・・・チラシで見たジュリアン・ムーアは“美しすぎる”というより“ちょっと怖い”って感じだから。

全編アントニーの声によるナレーションで説明されるのだが、冒頭で「母は温かくて明るく」「天性の社交家だった」と言うわりに、その後に人格破綻してる感じのエピソードが連なり、全然そういう風には見えないんですけど。
バーバラは最初からちょっとおかしなところのある人だったのか?
それが息子の目からは良く見えていたのか?
仲直りかと思いきや殺伐とした夫婦のベッドシーンがコワイ。
夫と若い女とを空港で見つけたとき、まあショックを受けたとはいえ、その罵りっぷりは醜悪。

アントニーがまだ14歳くらいのとき、母と息子ふたりで優雅に公園を散歩しながら、「私たちは恵まれている。私も昔は働いたことがあるけど、今は好きなことだけしていればいい身分になった」というようなことを話す。
お金が十分たくさんあって、セレブな社交を楽しんで、世界のあちこちに移り住む。
一見うらやましい環境だけど、もしもっとやらなきゃいけないことがあったり、生活のために頑張ったりしなきゃならなかったら、バーバラもアントニーもここまで追いつめられず、悲劇に至らなかったのではないかな〜と考えてしまった。

登場人物たち、タバコ吸い過ぎ。
誰が誰に気があるんだか、ゲイなのかバイなのか、節操ない人ばっかり。
エディ・レッドメインの顔やジュリアン・ムーアの腕はそばかすがいっぱいで、白人は日に当たると大変だな〜と思った。

美しすぎる母
Savage Grace

(2007年 スペイン/フランス/アメリカ)
監督/トム・ケイリン
出演/ジュリアン・ムーア(バーバラ・ベークランド)
   エディ・レッドメイン(アントニー・ベークランド)
   スティーヴン・ディレイン(ブルックス・ベークランド)
   エレナ・アナヤ(ブランカ)
   ウナクス・ウガルデ(ブラック・ジェイク)
   ヒュー・ダンシー(サム・グリーン)
公式サイト

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地上5センチの恋心

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

夫を10年前に亡くしたオデットは、デパートのコスメ売り場で働き、夜は羽根飾りの内職をして、ふたりの子供を育て上げた。心の支えは流行作家バルタザール・バルザン。待ちに待ったサイン会では緊張してうまくしゃべれず落ち込む。想いのたけを綴ったファンレターを渡したところ、作品を酷評され妻にも裏切られ傷ついたバルザンの心に響き、家出したバルザンがオデットの家に転がり込んできた。

思ったこと

主人公オデット、好きだな〜。
いつでも夢みる瞳で、気持ちの高まりとともにふわふわ宙に浮いてしまう、永遠の乙女キャラ!
大きな子がふたりもいるとはビックリだ。
夢みがちだからといって、脳天気で幸せいっぱいにばかり生きてるわけじゃない。
傷つきやすい心を抱えながら、仕事や子育てを真摯にこなし、つらい思いをいろいろ乗り越えてきているからこそ、他人を心から思いやることができる。
未成熟なだけのふわふわキャラとは一線を画しているのだ。
ピンクの服、ごてごてと飾られた部屋、ひらひらのネグリジェはご愛嬌。
カリブの島への憧れをかきたてるようなジョセフィン・ベイカーの歌が流れてくると踊り出さずにはいられない姿もほほえましい。
こういう人には本当に幸せになって欲しいな〜と思う。

上の息子(ゲイ)のルディ、明るくて優しくていい奴〜。
つれてくるボーイフレンドも感じいいし。
19才ということだが、美容師として楽しそうに働き、好みの男について屈託なく話し、母の相談にも親身になってくれるところがカワイイ!
そしてバナナの腰ミノには目がくぎづけだ!
下の娘、スー=エレンは反抗期かな?
いつも不機嫌で悪態をついている。
仕事がなかなか決まらないようだから同情の余地はあるが・・・。
きっとボーイフレンドも悪かったんだよね。
それにしても、ブラ売り場の売り子はガンになるって・・・なんじゃそりゃ!?
ここん家は開放的というか、息子や娘の恋人、母の恋人(?)とその息子などが出たり入ったりして、普通のことのように一緒に過ごしてるのがおもしろい。

バルザンをけなした文芸評論家、「中身が空っぽの本を好む人種がいるのです。安っぽい人形を集め、夕焼けを好む連中。アパートの管理人、レジ係、美容師など・・・」って、すんごい差別発言!
流行作家がファンの手紙に感動して会いに来て気持ちが通じ合う・・・って、あまりにありえないシチュエーションだが、それが心地いいのかもしんない。
私としては、憧れの作家やアーティストの生身を知って幻滅したくないから、一ファンとして遠くから見つめているだけでいいや〜って腰が引けちゃうけど。

地上5センチの恋心
Odette Toulemonde

(2006年 フランス/ベルギー)
監督・脚本/エリック=エマニュエル・シュミット
出演/カトリーヌ・フロ(オデット・トゥールモンド)
   アルベール・デュポンテル(バルタザール・バルザン)
   ファブリス・ミュルジア(ルディ)
   ニナ・ドレック(スー=エレン)
   カミーユ・ジャピィ(ナディーン)
   ジャック・ヴェベール(オラフ・ピムス)
   ローランス・ダムリオ(イザベル)
   アラン・ドゥテー(発行人)
公式サイト

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マイ・ブルーベリー・ナイツ

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

失恋したエリザベスは、元彼の部屋の向かいにあるジェレミーのカフェで、売れ残ったブルーベリーパイを食べる。毎夜のように訪れて、ジェレミーとの会話に慰められるエリザベス。しかし失恋から立ち直れないエリザベスは、アメリカを横断する旅に出る。

思ったこと

さすがウォン・カーウァイ、ゆらゆらざらざらとおしゃれな映像。
うーむポエミー。
舞台がアメリカになって、俳優が欧米人になって、言葉が英語になっても、受ける感触が同じですなー。
ただ今回は、撮影がクリストファー・ドイルじゃなかった。

どうでもいいことだが、私はアップルよりブルーベリー派だな、パイは。
なんでブルーベリーパイがいつも売れ残っちゃうんだろ?
でももし洋梨が並んでいたら、そっちを選んでしまうかも。
アイスはたっぷりと、生クリームは添えないでね。
やっぱその前にチーズケーキもいいかな・・・。
ジェレミーが食べていた、売れ残りのもっさりとした茶色いケーキも気になった。
心が弱っているときは甘いものをがっつり食べるのがいいよね・・・それにしても毎夜はヤバイんじゃ!? ダイエット的に。

ジュードのような店主がいるカフェが近所にあって、夜中にケーキを食べながらふたりでおしゃべりできるんだったら、私だって毎日通っちゃう。
そんでそんで、クリームつけたまま眠っちゃったりして・・・! なんちてなんちて。
ま、フツーに考えて、口の周りにクリームついたままの大人の女性がいたら引きますが。
キスシーンもジュードじゃなかったら、ドン引きですが。
逆に言うと、引かせなかったふたりはスゴイ。

「1日目、ニューヨーク州コニー・アイランド」
「57日目、ニューヨークから1120マイル、メンフィス」
「251日目、ニューヨークから5603マイル、ラスベガス」
・・・と、エリザベスのあてどない彷徨は続く。
離婚した妻のスー・リンが忘れられずアルコール依存症になったアーニー、人間不信をあらわにするギャンブラーのレスリー、それぞれの地でのエピソードはしんみりさせる。
だけど、エリザベスはすっかり脇役になって埋没してしまってる感じで、なんだか全体にブツ切れ感。
ナタリー・ポートマンは美しいが、不良少女っぽい役はあまり似合わない気がするなぁ〜。

エリザベスから葉書を受け取り、手当たり次第にメンフィスのバーに電話をかけまくって、ようやく見つけたエリザベスに(人違いだったんだが)すごくうれしそうに話しかけるジェレミーにキュンとした♡
これってエリザベスには知ることのできない場面・・・もったいない!

マイ・ブルーベリー・ナイツ
My Blueberry Nights

(2007年 フランス/香港)
監督/ウォン・カーウァイ
音楽/ライ・クーダー
出演/ノラ・ジョーンズ(エリザベス)
   ジュード・ロウ(ジェレミー)
   デヴィッド・ストラザーン(アーニー)
   レイチェル・ワイズ(スー・リン)
   ナタリー・ポートマン(レスリー)
公式サイト

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