パンズ・ラビリンス

お気に入り度 ★★★★★

こんな話

1944年スペインでは、軍事政権と抵抗ゲリラの攻防が続いていた。少女オフェリアは身重の母と共に、新しい父となるヴィダル大尉の駐屯地へと身を寄せるが、冷酷な大尉になじむことができない。森の中に謎めいた迷宮を見つけたオフェリアは、妖精の導きによって半神半獣のパンと出会い、「あなたは地底王国のプリンセスの生まれ変わり。王国へ戻るには3つの試練を乗り越えなければならない」と告げられる。

思ったこと

これは辛すぎる現実に耐えることができなかった少女が作り出した夢・・・?
悲しすぎる・・・。
悲しいけれど、グロテスクで美しい世界。
子守唄が耳について離れないよ。

とにかく映画でこんな怖い思いをしたのは久しぶり!!
オフェリアに襲いかかる恐怖のままに呼吸が荒くなり、ごくりと唾を飲み込む。
私は普段あんまり怖がらない性質なんだけど・・・今回ばかりは、帰りの夜道の木陰さえ怖ろしかったり、寝る前に布団の中で怪物に追われる幻影を見たりしました。
はぁー怖さを堪能・・・。

虫から姿を変える妖精、月明かりに浮かぶパンの姿、お化けガエルだけでも相当気味が悪いのだが、出色はふたつめの試練に出てくる怪物。
なっ、何これー・・・っ!?
白々とした肌色も、垂れ下がった皮膚も、鼻の穴が目立つ顔も怖いが、壁に描かれた子供を喰ってる絵!
ひぃーーーオフェリアちゃん、もっと怖がれよ!
怪物の前に置かれた皿を手に取ってしげしげ見たりして、すごい心臓だな・・・。
あげくにあんなにしつこく言われていた禁を犯すし・・・。
回廊のシーンはほんと、怖くて寿命が縮んだ。
子供の頃に見ていたらトラウマとなっていたことでしょう(ちなみに、私の子供のときのトラウマは楳図かずおとブラックジャック、近年克服)。

具合の悪いお母さんを助けるため、パンからもらったマンドレイクを牛乳風呂に浸し、新鮮な血をたらして、ベッドの下に隠すオフェリアちゃん。
ひー、人に見られたら、魔女として裁判にかけられてしまいそうな所行。
しかしこのマンドレイク、まるで赤ん坊のような声をたてながらうねうねと動いて、不気味ながらもちょっとカワイイ。
シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』を彷彿とさせる。
でも本当はマンドレイクの泣き声を聞いたら死んじゃうはずだよね。

現実世界でも目を背けたくなるようなことが次々と起こる。
怪我が悪化して脚を切断しなくてはならなくなったゲリラの仲間。
ウサギ狩りをしていただけで惨殺された農民。
楽しんでいるかのように行われる拷問。
普段は温厚な(?)私ですが、メルセデスが反撃したときには「やっちまえ!とどめをさせ!」とためらいなく応援してしまいました。
それにしても、口の傷を自分で縫う大尉の胆力には脱帽です。

オフェリア役の少女は哀感をたたえた瞳が印象的だった。
悲しみも苦しみもない世界は、この地上では見つけられないのか・・・。
弟を守ったことで魂の誇りも守られたことが、一縷の救いといえるのかもしれない。

パンズ・ラビリンス
El Laberinto del Fauno/Pan's Labyrinth

(2006年 スペイン/メキシコ)
監督/ギレルモ・デル・トロ
出演/イヴァナ・バケロ(オフェリア)
   ダグ・ジョーンズ(パン)
   セルジ・ロペス(ヴィダル大尉)
   アリアドナ・ヒル(カルメン)
   マリベル・ヴェルドゥ(メルセデス)
   アレックス・アングロ(フェレイロ医師)
   マノロ・サロ(ガルセス)
   ロジェール・カサマジョール(ペドロ)
公式サイト

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ダック・シーズン

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

ある日曜日、14歳のフラマとモコはアパートで留守番。コーラを飲みながらTVゲームをしていると、隣の部屋に住む女の子リタが、オーブンを貸してくれとやってきた。電話で宅配ピザを注文し、配達人のウリセスに「時間オーバーしたから料金を払わない」と言い張り、押し問答になる。

思ったこと

♪アヒルだってサンバを歌いたい グァーグァー♪
ごきげんなオープニングは、ナタリア・ラフォルカデによる、ジョアン・ジルベルトの「アヒル(ガチョウ)のサンバ」のカバー。
なんだか、とっても楽しいことが始まりそう。

・・・と思ったら、けだるい日曜の朝、アパートの一室で男の子ふたりがだら〜んとなってゲームをしているのだった。
ついこないだ観たメキシコ映画『イノセント・ボイス 12歳の戦場』(舞台はエルサルバドルだけど)の印象が強烈に残っていたので、最初はギャップにびっくりしたが、今のメキシコ・シティの一般家庭の様子って、日本の一般家庭とそう変わりない雰囲気なのね。
母目線で見ると「あんたたちっ、まただらだらして、しょうがないわね!」と思うけど、子供目線で見ると「親がいない間にこころゆくまでゲームゲーム♪コーラとポテチ♪」と思える。

しかし、だんだんおかしな成り行きに・・・。
お菓子を焼くのにオーブンを借りに来ただけのはずのリタは、棚や冷蔵庫をチェックしまくり、失敗したらそこにある材料で作り直し、料理本をびりびり破いたり、モコを誘惑(?)したりと傍若無人。
いい大人であるピザ配達人のウリセスは、いくらお金をもらえないからって、居座ったりゲームで決着をつけようとしたりして、ほとんど職務放棄。
それぞれが明かす悩みはとても現代的で共感できるものなんだけど・・・でもこの展開はやっぱりヘン!
たまたま集まった4人が過ごす、おかしな日曜日だ。

スクリーンの位置にちょうどTVゲーム画面があるかのようなアングルで、ゲームに熱中する人たちがこちらを覗き込んでくるような映像はおもしろい。
お菓子を作るリタの様子も、冷蔵庫の中やオーブンの中から、うかがい見える。

インタビュー記事を読んでいたら、フラマ役のダニエルくんとモコ役のディエゴくんは、プライベートでも親友になったそう。
そして撮影中は、ふたりともリタ役のダニーちゃんに恋心を抱いていたそう。
うわー! 甘酸っぱい!!

ダック・シーズン
Temporada de patos/Duck Season

(2004年 メキシコ)
監督/フェルナンド・エインビッケ
出演/ダニエル・ミランダ(フラマ/マリオ・アルベルト)
   ディエゴ・カターニョ・エリソンド(モコ/フアン・パブロ)
   ダニー・ペレア(リタ)
   エンリケ・アレオーラ(ウリセス)
公式サイト

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イノセント・ボイス 12歳の戦場

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1980年代の中米エルサルバドルでは、政府軍と反政府ゲリラの激しい内戦が起こっていた。日常的に銃撃戦が繰り広げられる小さな町に、11歳のチャバは家族と住んでいる。チャバや仲間たちは、誕生日が来るのを恐れていた。なぜなら12歳になると政府軍に徴兵されてしまうからだ・・・。

思ったこと

「この物語の語り手は、フィトやクリスティナ・マリアだったかもしれない。
でも、僕になった」
原作者オスカー・トレスが13歳でアメリカへ亡命するまでの実体験を基に作られた映画だということをふまえると、この言葉がしみてくる。
生き延びられたのは、ただ運が良かったから・・・。
同じ状況のなか、むなしく死んでいった友が何人もいるということを思うと、胸ふたがれる。
オスカー・トレスは「あの頃何もできなかった幼い自分に対する罪の意識と向き合わなくてはならなかった」と発言している。
年端もいかぬ子供が必死で生きてきた、それだけなのに、こんな罪悪感を抱かなくてはならないなんて・・・。
現在も、世界では30万人を超える子供たちが兵士にされているという。
ああ、私って、何にも知らないんだなぁ・・・って愕然とする。

チャバは母、姉、小さな弟と4人でつましく暮らしている。
内戦のまっただ中で、銃弾が部屋の中にまで激しく撃ち込まれ、生きた心地がしない。
近所の女の子が流れ弾に当たって死んだとき、母ケラはゲリラに身を投じている弟のベトに「ゲリラの打った弾だったかもしれない」となじる。
民衆の側であるはずのゲリラだって、死をもたらす存在という次元では同じなのだ。

チャバの仲間のアントニオが政府軍に連れられていったしばらくあとに、立派な少年兵となって戻ってくる。
銃を誇示して、かつての友人たちに威圧的に接するアントニオ。
虚勢を張って、自分を変えなければ、耐えていけないのかもしれない・・・と、いたいたしかった。

それでも、こんな悲惨に思える境遇のなかでも、涙や恐れにゆがんだ顔ばかりじゃない。
思い合う家族、友達と遊ぶ笑顔、幼い恋心・・・そんな何気ない光景がきらきらして、なんだか胸を打たれた。
うん、こういうものを大切にしなければいけないんだ。

それにしても、一人アメリカに渡って戻ってこない父親、いったい何をやっているんだ!?
かわいい子供たちや、けなげなお母さんを放っておかないで〜!

イノセント・ボイス 12歳の戦場
Voces Inocentes/Innocent Voices

(2004年 メキシコ)
監督/ルイス・マンドーキ
原作/オスカー・トレス
出演/カルロス・パディジャ(チャバ)
   レオノラ・ヴァレラ(母ケラ)
   ホセ・マリア・ヤスビク(叔父ベト)
   ダニエル・ヒメネス=カチョ(司祭)
   グスタボ・ムニオス(アンチャ)
   オフェリア・メディナ(祖母ママトーヤ)
公式サイト

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