[リミット]

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

目を覚ましたら、暗い木の棺に閉じ込められていたポール。手元にあったライターを灯し、携帯電話で助けを求めるが・・・。

思ったこと

主人公の男が土中の棺に閉じ込められたまま、焦りと恐怖に観客を巻き込みながら、実際の時間どおりに映画内の時間も進む。
閉所恐怖症気味、息苦しいのが大のニガテの私には向かない映画であった・・・。
特に序盤では暗い画面が続き、ライターの光がパッパッとちらつくから、神経にさわるというか、眠くなる・・・。
まぶしい光の刺激って眠くなるよね・・・(ちょっと疲れてた日だったから余計に)。
このつらさ、映画館で観たならではだ。
家でTVとかDVDとかだったら、この息苦しさは共有できなかったと思うもの。

昔、土葬の地域では、埋葬されてから息を吹き返してしまった人もあったというが、そういう状況に陥った人はこんなんだったのかなぁと想像した。
とてつもなく恐ろしいよね・・・私だったらどうしよう。
携帯電話があったらどこに電話しよう!?
考えてみたら、近年は覚えている番号ってほぼないな・・・。
電話番号案内の番号さえ分からない・・・。
ポールは粗野な印象だし、妻の母と仲が悪いらしくてこんなときでも憎まれ口をたたいているしで、なかなか応援する気持ちになれなかったが、施設にいる母親に電話するところとか、妻と電話がつながったとことかでほろりときた。
しかしアメリカの会社とか政府機関とかの対応はびっくりするほど冷たく、何か裏があるのかと疑ったくらい。
日本だと言葉はもうちょっとオブラートにくるまれると思うけど、動きはもっと鈍そうだな・・・。
こんな状況に追い込んでおきながら「金を用意しろ」と迫る犯人、無茶言うなや・・・と思った。
そして携帯電話を入れておくなら、十分に充電をし、かけるべき電話番号を登録しといて、もっとハードルを下げてくれ。

それにしても登場人物は全編ほぼひとり、セットも棺と土だけという、アイデアと脚本勝負の映画で、きっと制作費はとても少なくて済んだんだろうなぁ。
物語の舞台としては最も狭い棺の中オンリーで95分という時間を持たせた、撮影の工夫とライアン・レイノルズの演技はなかなかのものだったと思う。
でもちょっと『ソウ』を彷彿させて「またこんなんか」感があるし、衝撃度ではあちらのほうが上だったよねぇ。

[リミット]
Buried

(2009年 スペイン)
監督/ロドリゴ・コルテス
出演/ライアン・レイノルズ(ポール・コンロイ)   
公式サイト

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瞳の奥の秘密

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

裁判所を定年退職したベンハミンは、25年前に起きた殺人事件を題材に小説を執筆し、元上司のイレーネに読ませる。事件と犯人逮捕の成り行きを思い起こしていくうちに、隠されていた真相と感情も掘り起こされていく。

思ったこと

女の伏せたまなざし、列車に乗る男、窓ガラス越しに合わせる手、プラットホームを走る女・・・夢の中のようにぼやけた映像で詳細は分からないのに、揺れる感情が胸に染みるオープニング。
これが、ベンハミンが書こうとしている小説の一シーンと分かってからも、その小説のいったいどこにそんな場面が?という状態で話は進むのだが、いよいよそのシーンに差しかかったとき、一番初めに登場したことの意味が胸に迫ってくる。

過去の回想と、現在が入り組む構成。
ベンハミンとイレーネ、同じ俳優が演じてるけど、若いときと年取ったときがそれぞれ自然だね〜(実際には何歳なんだろう、この人ら?)。
モラレスの変わり方はちょっとショッキングだったが・・・。
時折さりげないユーモアが笑みを誘う。
判事「エス(怒)」「エス、ポシ(怒)」
ベンハミン「・・・・・・・・・・・・・ト」
のシーンは最高に好き!
「込み入った話?」と執務室の扉を閉めるイレーネの行動は、閉めようとしたけど閉めないくすりと笑える場面あり、しみじみと余韻を残す閉め方あり、すごいうまい繰り返し方だ。
“Aの文字が打てないタイプライター”というのも何度も出てくるのだけど、それがあんなふうにつながるとは!
これはスペイン語が分かる人だったら、もっとハッとさせられたんだろうな〜。

「変わろうと思っても、人が変えられないもの、それは情熱(パシオン)だ!」
喧噪うずまくサッカー場から、暗い地下道での追走劇に興奮!
もしも私が逃げて隠れねばならなくなったとしたら、本屋とか映画館とかでつかまってしまうのかしらん・・・でも今はネットで本も映画も取り寄せたり見たりできるから大丈夫かな!?

イレーネは高学歴で押し出しの強い女性。
こんな骨太グラマラスな美人(なんだよね?)にキツイ言葉で責められると迫力だわ〜。
ゴメスの視線が素直すぎてウケる。

事件は解決し、小説も完成し、なのになんで映画は終わらないんだろ〜と思っていたら、衝撃の展開。
私も死刑反対派だけど、それって、それって、こういうこと・・・なの?・・・かもしれない・・・と考えさせられる。
犯罪と恋愛、それぞれにまつわる心情がどちらもしっかり描かれていて、充実の観後感。

瞳の奥の秘密
El secreto de suss ojos/The Secret in Their Eyes

(2009年 スペイン/アルゼンチン)
監督/ファン・ホセ・カンパネラ
出演/リカルド・ダリン(ベンハミン・エスポシト)
   ソレダ・ビジャミル(イレーネ・メネンデス・ヘイスティングス)
   パブロ・ラゴ(リカルド・モラレス)
   カルラ・ケベド(リリアナ・コロト)
   ハビエル・ゴディーノ(イシドロ・ゴメス)
   ギレルモ・フランセーヤ(パブロ・サンドバル)
公式サイト

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抱擁のかけら

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

かつて映画監督だったマテオ・ブランコは、14年前に視力を失い、脚本家ハリー・ケインとして生きていた。ライ・Xという男が脚本を依頼しに訪ねてきたのをきっかけに、ハリーは過去に起こったことをディエゴに語り始める・・・。

思ったこと

えーと、なんかよく分かんなかった!
つまんなかったのか、おもしろかったのかも、よく分かんない・・・。
味わいどころが分からない!!
愛?についての映画なの?かな?・・・たぶん・・・。
アルモドバル監督ならではといえる、一風変わったストーリー構成だ。
そういえばこの監督の映画って、観ている間はけっこう引き込まれるんだけど、終わってからこういうぽか〜んとした気持ちにさせられることが多いような気がするな。

始まってからしばらく、2008年の話と1992年の話がかわるがわる語られるのだが、実業家エルネスト・マルテルがキーパーソンであるらしいこと以外、つながりがなかなか明かされない。
でもまあ、ペネロペは人生を狂わせるほどいい女、って話ですかね?
ペネロペがオードリー・ヘップバーン風の装いでカメラテストを受けるシーンがあるが、似合ってなくてびっくりした!
いくら美女といっても“何を着ても似合う”というわけにはいかないのね〜。
その代わり、マリリン風のふわふわプラチナブロンドは、眉毛が黒々としているにもかかわらず、とてもしっくりきてる。
それにしてもスペイン人は激しいな〜。

エージェントであるジュディットの息子で仕事や生活のいろいろを手伝っているディエゴと、ハリーが「献血センターで血を集めている吸血鬼」の構想を練っているのはまあおもしろかったが、長々と話しすぎだった!

そして、かなり終わりのほうで、ジュディットがディエゴに明かした秘密・・・えー、それ秘密だったんかーという感じ。
びっくりしているディエゴにびっくり。
それまで説明されていなかったけど、てっきり周知のことなんだろうと思っていたというか、それじゃなかったらいったい何なの?というようにしか見えなかったので。

エルネストJr.の変貌ぶりはおもしろかったかな・・・。
過去の彼、いかにもゲイな仕草が微笑を誘う。
そして映画『謎の鞄と女たち』の再編集・・・。
「すごくおもしろい」というのは本気? それともギャグ?

マテオとレナが訪れる地の景観が独特で印象に残った。
黒い大地にぼこぼこと穴が空いていて、まっすぐに延びる道路を車で走る。
ファマラ海岸は、カナリア諸島のランサロテ島というところにあるらしいよ。

抱擁のかけら
Los Abrazos Rotos/Broken Embraces

(2009年 スペイン)
監督・脚本/ペドロ・アルモドバル
出演/ペネロペ・クルス(レナ)
   ルイス・オマール(マテオ・ブランコ/ハリー・ケイン)
   ブランカ・ポルティージョ(ジュディット)
   ホセ・ルイス・ゴメス(エルネスト・マルテル)
   ルベーン・オチャンディアーノ(ライ・X)
   タマル・ノバス(ディエゴ)
   ロラ・ドゥエニャス(読唇術師)
公式サイト

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それでも恋するバルセロナ

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

親友同士のヴィッキーとクリスティーナは夏を過ごすためにバルセロナにやってきた。画廊でのパーティで出会ったフアン・アントニオに惹かれ、一緒に暮らし始めたクリスティーナ。そこに元妻のマリア・エレーナが現れて・・・。

思ったこと

おもしろ~い!!
軽快な「バルセロナ~♪」というテーマ曲にのって、テンポよくストーリーに引き込まれていく。
ウディ・アレンも、自分は出演しなくていいから、こういう感じのどたばたラブコメばかり作ってればいいのに。
ちょっとシニカルなナレーションが効いている。
サグラダ・ファミリアやグエル公園などのガウディ建築がしょっちゅう出てくるし、バルセロナの観光映画っぽくもあるよね。
スペインの陽光に誘われる〜。

私はクリスティーナと全然似ていないけど、「自分が望まないものはよくわかっている、でも望んでいるものがわからない」ために、いつまでも自分探しをしている・・・というところにすごく共感!
ヴィッキーの婚約者ダグには「幸せになれないタイプ」と言われ、マリア・エレーナには「何にも満足できない」「慢性的な欲求不満」とののしられる。
芸術や創造的なものへの憧れは強いのに、ひとつのことに一心に打ち込むこともできず、自分はこの程度かと見定めることもできず、これじゃないこれじゃない・・・とさまよって生きていく・・・。
なまじちょこっと才能や魅力を持ち合わせたりもするからますます惑う。
そんで「やっぱ違った」と捨てるときはあっさり。
安住はできないけど、退屈はしない、それなりに楽しい人生が送れそうかもね〜、深く悩まなければ。

対照的にお堅いヴィッキーが、わりと簡単に雰囲気にのせられるのも、ありそうな感じ。
理想的な相手だと信じていたダグが色あせてしまいつつも、端からは何の問題もなさそうに見える人生を歩むんでしょうね・・・ジュディのように。
主役のひとりなのに、ポスターに出ていなくてかわいそう〜。

そしてペネロペ、サイコーね!
ほとばしる才気と手のつけられない激情。
不機嫌そうな顔で登場するだけで、場の空気をさらう存在感。
スカーレット・ヨハンソンも旬の魅力を発散していると思うけど、ペネロペの前に出るとなんだか小娘感が漂ってしまう。
身近にいたらすごく困らされそうだけど、魅力的なんだろうなぁ〜。
「フアンとマリア・エレーナを観察していたクリスティーナは、人の心って謎だと思った」という冷静なナレーションが笑えたが、これこそがこの映画のテーマかも。

それにしても、美女3人がとりこになる色男がハビエル・バルデムだというのも可笑しい。
この男、調子よすぎ〜。

それでも恋するバルセロナ
Vicky Cristina Barcelona

(2008年 アメリカ/スペイン)
監督・脚本/ウディ・アレン
出演/スカーレット・ヨハンソン(クリスティーナ)
   レベッカ・ホール(ヴィッキー)
   ペネロペ・クルス(マリア・エレーナ)
   ハビエル・バルデム(フアン・アントニオ)
   パトリシア・クラークソン(ジュディ)
   ケヴィン・ダン(マーク)
   クリス・メッシーナ(ダグ)
公式サイト

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美しすぎる母

お気に入り度 ★★☆☆☆

こんな話

プラスティックの基となる合成樹脂ベークライトを発明したことで大富豪となったベークランド家。上流階級のつきあいに溶け込めなかったバーバラを捨て、ブルックスは息子アントニーのガールフレンドと一緒に家を出る。残された母と息子が偏った愛情の果てに迎えた、実際の事件を映画化。

思ったこと

最初から最後までよく意味が分かんない映画だったぁ〜。
早く終わんないかなぁ〜ともぞもぞと耐えた時間は長かった。
そもそもタイトルからして謎だったしな・・・チラシで見たジュリアン・ムーアは“美しすぎる”というより“ちょっと怖い”って感じだから。

全編アントニーの声によるナレーションで説明されるのだが、冒頭で「母は温かくて明るく」「天性の社交家だった」と言うわりに、その後に人格破綻してる感じのエピソードが連なり、全然そういう風には見えないんですけど。
バーバラは最初からちょっとおかしなところのある人だったのか?
それが息子の目からは良く見えていたのか?
仲直りかと思いきや殺伐とした夫婦のベッドシーンがコワイ。
夫と若い女とを空港で見つけたとき、まあショックを受けたとはいえ、その罵りっぷりは醜悪。

アントニーがまだ14歳くらいのとき、母と息子ふたりで優雅に公園を散歩しながら、「私たちは恵まれている。私も昔は働いたことがあるけど、今は好きなことだけしていればいい身分になった」というようなことを話す。
お金が十分たくさんあって、セレブな社交を楽しんで、世界のあちこちに移り住む。
一見うらやましい環境だけど、もしもっとやらなきゃいけないことがあったり、生活のために頑張ったりしなきゃならなかったら、バーバラもアントニーもここまで追いつめられず、悲劇に至らなかったのではないかな〜と考えてしまった。

登場人物たち、タバコ吸い過ぎ。
誰が誰に気があるんだか、ゲイなのかバイなのか、節操ない人ばっかり。
エディ・レッドメインの顔やジュリアン・ムーアの腕はそばかすがいっぱいで、白人は日に当たると大変だな〜と思った。

美しすぎる母
Savage Grace

(2007年 スペイン/フランス/アメリカ)
監督/トム・ケイリン
出演/ジュリアン・ムーア(バーバラ・ベークランド)
   エディ・レッドメイン(アントニー・ベークランド)
   スティーヴン・ディレイン(ブルックス・ベークランド)
   エレナ・アナヤ(ブランカ)
   ウナクス・ウガルデ(ブラック・ジェイク)
   ヒュー・ダンシー(サム・グリーン)
公式サイト

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パンズ・ラビリンス

お気に入り度 ★★★★★

こんな話

1944年スペインでは、軍事政権と抵抗ゲリラの攻防が続いていた。少女オフェリアは身重の母と共に、新しい父となるヴィダル大尉の駐屯地へと身を寄せるが、冷酷な大尉になじむことができない。森の中に謎めいた迷宮を見つけたオフェリアは、妖精の導きによって半神半獣のパンと出会い、「あなたは地底王国のプリンセスの生まれ変わり。王国へ戻るには3つの試練を乗り越えなければならない」と告げられる。

思ったこと

これは辛すぎる現実に耐えることができなかった少女が作り出した夢・・・?
悲しすぎる・・・。
悲しいけれど、グロテスクで美しい世界。
子守唄が耳について離れないよ。

とにかく映画でこんな怖い思いをしたのは久しぶり!!
オフェリアに襲いかかる恐怖のままに呼吸が荒くなり、ごくりと唾を飲み込む。
私は普段あんまり怖がらない性質なんだけど・・・今回ばかりは、帰りの夜道の木陰さえ怖ろしかったり、寝る前に布団の中で怪物に追われる幻影を見たりしました。
はぁー怖さを堪能・・・。

虫から姿を変える妖精、月明かりに浮かぶパンの姿、お化けガエルだけでも相当気味が悪いのだが、出色はふたつめの試練に出てくる怪物。
なっ、何これー・・・っ!?
白々とした肌色も、垂れ下がった皮膚も、鼻の穴が目立つ顔も怖いが、壁に描かれた子供を喰ってる絵!
ひぃーーーオフェリアちゃん、もっと怖がれよ!
怪物の前に置かれた皿を手に取ってしげしげ見たりして、すごい心臓だな・・・。
あげくにあんなにしつこく言われていた禁を犯すし・・・。
回廊のシーンはほんと、怖くて寿命が縮んだ。
子供の頃に見ていたらトラウマとなっていたことでしょう(ちなみに、私の子供のときのトラウマは楳図かずおとブラックジャック、近年克服)。

具合の悪いお母さんを助けるため、パンからもらったマンドレイクを牛乳風呂に浸し、新鮮な血をたらして、ベッドの下に隠すオフェリアちゃん。
ひー、人に見られたら、魔女として裁判にかけられてしまいそうな所行。
しかしこのマンドレイク、まるで赤ん坊のような声をたてながらうねうねと動いて、不気味ながらもちょっとカワイイ。
シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』を彷彿とさせる。
でも本当はマンドレイクの泣き声を聞いたら死んじゃうはずだよね。

現実世界でも目を背けたくなるようなことが次々と起こる。
怪我が悪化して脚を切断しなくてはならなくなったゲリラの仲間。
ウサギ狩りをしていただけで惨殺された農民。
楽しんでいるかのように行われる拷問。
普段は温厚な(?)私ですが、メルセデスが反撃したときには「やっちまえ!とどめをさせ!」とためらいなく応援してしまいました。
それにしても、口の傷を自分で縫う大尉の胆力には脱帽です。

オフェリア役の少女は哀感をたたえた瞳が印象的だった。
悲しみも苦しみもない世界は、この地上では見つけられないのか・・・。
弟を守ったことで魂の誇りも守られたことが、一縷の救いといえるのかもしれない。

パンズ・ラビリンス
El Laberinto del Fauno/Pan's Labyrinth

(2006年 スペイン/メキシコ)
監督/ギレルモ・デル・トロ
出演/イヴァナ・バケロ(オフェリア)
   ダグ・ジョーンズ(パン)
   セルジ・ロペス(ヴィダル大尉)
   アリアドナ・ヒル(カルメン)
   マリベル・ヴェルドゥ(メルセデス)
   アレックス・アングロ(フェレイロ医師)
   マノロ・サロ(ガルセス)
   ロジェール・カサマジョール(ペドロ)
公式サイト

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トーク・トゥ・ハー

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

看護士ベニグノは、事故に遭って4年間ずっと昏睡状態のバレリーナ、アリシアを献身的に介護しながら語りかける。女闘牛士リディアも競技中の事故で大怪我をし、目覚めることのない眠りについた。絶望しながら付き添うジャーナリストのマルコは、ベニグノと出会い、次第に友情を感じていく。

思ったこと

目覚めることのないアリシアの全身をていねいに洗い清め、マッサージでもみほぐし、髪を切り、ペディキュアや化粧を施し、献身的に世話をするベニグノ。
「あ、生理が始まっている」で引いた・・・スタッフとして当然の光景なんだろうけど〜。
わざわざそんな場面を見せるということは、こちらが引くかもしれないのを想定してるんだよね、監督は?
回復の見込みもない昏睡状態の患者を、くる日もくる日も愛情をもって大切に扱い、車椅子に乗せて散歩させ、何の反応もないのにひたすら明るく語りかけるなんて、ベニグノは介護士の鑑のような人物・・・でもどうしても嫌悪感がぬぐえないのは、まるでお気に入りの人形を偏執的に大事にしているように見えるから。
きっと生身のアリシアとはまともな関係を結べなかったであろう・・・元々ストーカーじみてたしな。
いくら大きな愛をもっていてもね、イヤなもんはイヤなんだよ〜〜〜。
心からの愛でも、いつか必ず伝わるとは限らないんだよ〜〜〜。
たとえ結果として良いことが起こったとしても、許されないものはやはり許されないんだよ〜〜〜。
自分の青春を母親の世話に捧げた青年の、まともな人間関係の能力を育てることができなかった、歪んだ人生ということなんだろうか。
どこまでも孤独なベニグノは確かに哀れだ・・・。

恋人リディアが昏睡状態になってしまった失意のマルコが、ベニグノと親しくなって、最後まで「無実だ」と擁護していたのは、自分もできることならベニグノのようにただひたすら目覚めない恋人を愛したかったという思い故だろうか。

リディアはすらりと筋肉質で無駄な肉がまったくついていない身体つきが美しい。
演じているロサリオ・フローレスは女優兼歌手だということだが、なんでこんなに女闘牛士として説得力あるボディなんだろう!?
ギュッギュッと身体を締め付けるようなコスチュームを試合前に身につける様子が、びりびりとした緊張感を伝えてきて、全身から生命力の美しさが立ち上る。
厳しい表情も、本当にかっこいい!
それでいて、ドレスを着たらすごく女っぽいんだもんね。
こういうタイプ、日本人には絶対いなさそうだよなぁ。

ブラジル人歌手、カエターノ・ヴェローゾのギター弾き語り「ククルクク・パロマ」はすごい良かった!
ククルクク〜♪
しかしマルコはよく感動して泣く男だね。
男くさいルックスとのギャップが、なかなか魅力的だと思う。

トーク・トゥ・ハー
Hable Con Ella/Talk To Her

(2002年 スペイン)
監督・脚本/ペドロ・アルモドバル
出演/ハビエル・カマラ(ベニグノ)
   レオノール・ワトリング(アリシア)
   ダリオ・グランディネッティ(マルコ)
   ロサリオ・フローレス(リディア)
   ジェラルディン・チャップリン(カタリナ)
公式サイト

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ボルベール<帰郷>

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

ライムンダがある日帰宅すると、15歳の娘パウラが、関係を迫ってきた父親を包丁で刺し殺してしまったと告白した。ひとまず隣にあるクローズ中のレストランの冷蔵庫に死体を隠し、成り行きからそのレストランで料理を提供するようになる。一人暮らしの伯母が亡くなり、姉ソーレと隣人アグスティナに葬儀を任せるが、4年前に火事で死んだはずの母イレネの幽霊が現れたという噂が流れていた。

思ったこと

Volver01_2熱い血と肉を体内に満たした女たちが、鮮やかな原色のオーラをまといながら、傷つきながらも骨太にどっしりと地を踏みしめて生きている・・・そんな圧倒的な印象を与える映画。
花いっぱいに飾られた墓を掃除するオープニングから、女たちの力強さが伝わってくる。
まるで男は子供を作るときにさえいれば世界は回っていくって感じだな〜。

4年前に火事で死んだ母イレネの姿が近所で目撃されているという噂話をする女たちが、「よくあることよ」「そうね」とこともなげに言う。
そ、そーなのか!?
スペインのラ・マンチャという土地では、神秘が生活の中に溶け込んでいて何が起こってもおかしくない・・・という気分にすっかり私も支配されてしまったので、本当の幽霊が現れたと信じて疑わなかったよ!
言葉が通じないロシア女のふりをしながら、いそいそとシャンプーを手伝うおちゃめな幽霊・・・。

「ママがまるでここにいて、おならをしたみたい」というライムンダの言葉。
母と不仲だったというライムンダだが、愛情がないわけじゃないんだ・・・ということを感じさせて、ユーモラスながら胸が熱くなるシーンだ。
ライムンダがレストランで「ボルベール」を歌うのを、離れた車の中で聞くイレネ。
できすぎなシチュエーションだけど、歌声にあふれる情感もあいまって、イレネとともに涙があふれ出る。

ペネロペ・クルス演じるライムンダは、かなりゴーイング・マイ・ウェイな人。
死体の始末にしても、レストランを巡る顛末にしても・・・すげーなー。
夫の死体を片付けていて付いた血を、隣人に「怪我でもしたの?」と指摘され、「女にはいろいろあるのよ」とさらりと返す肝の太さ。
かと思えば、イレネに胸のうちを吐き出したあとは、子供に戻ったかのように心細そうに胸にもたれて甘える二面性。
そばにいたらパワーに圧倒されそうだけど、どうにも憎めない感じでもある。
体温や匂いを感じさせるような身体、何があっても生き抜きそうな生命力、大切な人を守る根性と愛情をたっぷり持っている・・・妖精的なはかなさとは対極なわけだが、この力強さこそが究極的な女の魅力なのかも。

ところで、ライムンダの顔は濃い〜が、姉ソーレはわりと平面的で日本人にもいそうな顔と思った。
娘パウラはまた全然雰囲気違うし。
スペイン人の平均的な顔ってどんなんだろ?

ボルベール<帰郷>
Volver

(2006年 スペイン)
監督・脚本/ペドロ・アルモドバル
出演/ペネロペ・クルス(ライムンダ)
   カルメン・マウラ(イレネ)
   ロラ・ドゥエニャス(ソーレ)
   ブランカ・ポルティージョ(アグスティナ)
   ヨアンナ・コバ(パウラ)
   アントニオ・デ・ラ・トレ(パコ)
   チュス・ランブレアヴェ(パウラ伯母)
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あなたになら言える秘密のこと

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

友達を作らず趣味もなく、勤め先の工場で黙々と働き、家とを往復するだけのハンナ。工場長から1カ月休暇をとるように言われ、バスで訪れた見知らぬ町で、事故で重傷を負った男ジョゼフを看病することになる。ヘリコプターで連れてこられた先は、海洋に浮かぶ油田掘削所。ジョゼフを看病し、油田掘削所で働く数人の男たちと過ごすうちに、自分に閉じこもっていたハンナが少しずつ変わっていく。

思ったこと

ほとんど口をきかず、人の言うことも聞いていないみたいで、何を考えているのか全然つかめないハンナは、自閉症とか極度の潔癖性とか、そういう人なのかなぁと最初思った。
まさかあそこまで重い秘密を抱えていたとは・・・。

まるで自分にエサを与えるかのように、リンゴ、ライス、チキン(ナゲット?)だけを口にしていたハンナ。
毎食趣向をこらして皆の故郷の料理を作ろうとする陽気なコックのサイモンと触れ合ううちに、ジョゼフの食事を手伝っていくうちに、味わうということを思い出していく。
“食べる”ということは“生きる”ということに直結しているのだなぁと実感できる。

外界から隔絶された油田掘削所での毎日は淡々と過ぎていって、同僚たちの人となりも断片的な描写しかされず、派手なドラマが起こるわけでもない。
そんななか、たまたま同じ時を過ごすことになった患者ジョゼフと看護士ハンナが、日々のなかで心の奥底に秘めていたものを打ち明けられるようになり、互いに特別な存在となっていく。
ハンナが初めて笑顔を見せたときは、ホッとしたね。
並んでブランコを漕ぐハンナとサイモンは微笑ましいね。
魂の救済って、何かドラマティックな出来事によってパッと行われるわけではなく、ある日いきなりすべてが変わるわけではなく(そういうこともあるかもしれないし、そのほうがより映画的だろうけど)、何気ない積み重ねの中の思いもかけないところに潜んでいるのかもしれない。
そして、どんなにつらい現実があっても、生きている限り、“すべてがおしまい”ということはないのだとも考えさせられる。

ところで、工場や油田掘削所では英語が使われていたので、これってアメリカ?イギリス?それともどこか違う国で英語が共用語となっている場所ということ?と、ちょっととまどった。
というのも、ハンナが最初から外国人と言われてたから。
私にはよく分からなかったけど、言葉の発音あたりにネイティブじゃない感が出てるのかしら?
たぶん、人の外見や雰囲気、町の風景などに、欧米人には分かる微妙な違いってあるんだろうな。
逆にあちらの人々には日本・中国・韓国などの区別がつかないように。

あなたになら言える秘密のこと
The Secret Life of Words

(2005年 スペイン)
監督/イサベル・コイシェ
出演/サラ・ポーリー(ハンナ)
   ティム・ロビンス(ジョゼフ)
   ハビエル・カマラ(サイモン)
   エディ・マーサン(ヴィクター)
   ダニエル・メイズ(マーティン)
   ジュリー・クリスティ(インゲ)
公式サイト

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麦の穂をゆらす風

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1920年、イギリスの弾圧に耐えかねたアイルランドの民は、独立を求めて武装し抵抗を始めていた。デミアンは医師になる夢をあきらめ、兄テディと共に闘う道を選ぶ。激しい戦闘が続いた後、とうとうイギリス軍が撤退し、講和条約が結ばれた。喜びもつかの間、アイルランドに不利な条約の内容をめぐって意見が対立し、かつての仲間が銃を向け合う内戦へと突入する。

思ったこと

緑濃くみずみずしい大地と、苛酷な人間の運命との対比。
アイルランド独立闘争はよく映画に出てくるのでなんとなくは知っていたけれど、どういうふうに始まって、どういうことが起こっていったのか、よく分かり考えさせられる映画だった。

冒頭、17歳のミホールが、「マイケル」と英語名を名乗らなかった、ただそのために、イギリス軍人に暴行を受けて殺されてしまう。
あまりの理不尽さにショックを受ける。
しかし、私たち日本も、かつて他国の人に日本語を強要した歴史があるわけで・・・。
権力をふりかざしてアイルランド人を踏みつけるイギリス軍は醜く、その姿がイギリス人監督によって描かれたということに感銘を受ける。
拷問や焼き討ちのシーンは目をそむけたくなるほどのむごさだ。
ともすれば自虐に陥ってしまいかねない描写だが、アイルランド人には誇りと勇気があって、イギリス人は残虐で横暴などという単純な話ではない。
人は環境や状況によってこんな風にもなりうる・・・歴史を知り、いろいろな立場の人に感情移入し、自分だったらどう行動できるか想像力を養うことに、映画を観るひとつの意味があるのかなと思う。

イギリスという敵に向かってひとつになっているときよりも、かつて助け合った仲間同士で争わねばならなくなった内戦時の傷はさらに深い。
求めている理想は同じはずなのに・・・。
人間って、信念のために生きたり死んだり殺したりできるんだな・・・。
皆が幸せになれればいいのに・・・なんて言葉は月並みすぎて、ほとんど意味がないでしょうか。
でも言わずにはおれないけど。

闘いや政治の表舞台に出ているのは男だけど、強く情が深い女たちの姿も印象に残る。
家を焼かれた老婆ペギーが、「私はどこへも行かない。鶏小屋を掃除して寝るよ」と言ってきかない場面が胸を突いた。
シネードの短い髪を包んだスカーフがほどかれて、ダミアンと抱き合うシーンは、数少ないほっとできるひとときだった。
毅然とした裁判官リリーがかっこよかった!

麦の穂をゆらす風
The Wind That Shakes the Barley

(2006年 アイルランド/イギリス/ドイツ/イタリア/スペイン)
監督/ケン・ローチ
出演/キリアン・マーフィー(デミアン)
   ポードリック・ディレーニー(テディ)
   リーアム・カニンガム(ダン)
   オーラ・フィッツジェラルド(シネード)
   メアリー・オリオーダン(ペギー)
公式サイト

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