湖のほとりで

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

北イタリアの小さな村。美しい湖のほとりで、少女アンナが全裸で死んでいるのが見つかった。アンナはいったい何故、誰に殺されたのか。村に着任したばかりのサンツィオ刑事の捜査が始まると、次第に人々の抱えている問題や秘密があらわになっていく。

思ったこと

怪しすぎる太った男マリオの車に乗るかわいい小さな女の子、その女の子を必死で探す大人たち・・・静かな映像ながら、いったい何が起こるのか起こったのか心配でドキドキさせる秀逸なオープニングだ。

「湖に住む蛇を見ると永遠の眠りにつく」・・・幻想的な伝説が似つかわしい、緑に囲まれた美しい湖。
皆から好かれている若い女性の死体が見つかったという痛ましい事件の舞台なのに、横たわるアンナも含めて、不謹慎に思えるくらい美しすぎる。
警察の人々が亡霊のように現れてくる映像も凝っていてきれい。
さらに、おじさんふたりがたたずんでいるだけでも、絵になりすぎるほど絵になる。
こんなにきれいな自然に囲まれて牧歌的に見える村でも、人々の人生はそれぞれに重い。

捜査が進むうちに少しずつあらわになっていく、村の人々の隠された思い。
知能がおぼつかない青年マリオは、かわいがっているでぶウサギのマチステを父親が食べてしまうのを恐れている。
脚の悪いマリオの父は、まるでこの世のすべてを憎んでいるようだ。
娘を溺愛しすぎているアンナの父、そこから逃げ出すアンナの義姉。
仕事を怠けがちなアンナの恋人ロベルト。
とても感じがいいふたりだが、子供の死をきっかけに離婚してしまったカナーリ夫妻。
最初はいろんな人が怪しく思えるが、調査が進むうちにだんだんと、あぁこういうことがあったのかも・・・とうすうす分かってきて、その真相は悲しすぎて、明らかになってほしくないような気持ちになる。
いくら近くにいて親しいと思っていても、人の心の中って分からない。
「この気持ち、あなたには分からない」とは簡単に口に出してしまいがちな言葉だけれど、自分が知らないことがあるのを分かっていない、相手がどんな思いを持っているか斟酌しない、想像力に欠けた言葉なのだなぁと改めて感じさせられた。
中心となって捜査を進めるサンツィオ刑事、なぜかこんな田舎に赴任してきて、堅物っぽくて、難しい年頃の娘とのコミュニケーションもうまくいってなくて・・・事件とは別に、彼にも抱えているものがあった。
胸のうちの苦悩を表に出さずに呑み込んでいる表情が映画に深みをもたらしている。

ラストシーン、ああ、また悲しい思いがひとつ積み重なると涙がにじんできたとき、気難しい父親であるサンツィオが放ったひと言で見える景色が変わる。
なんというか、希望というほどではないけど、あらゆる思いを呑み込んで、それでも人生を前に進んでいける・・・というような肯定的なものを感じる。

湖のほとりで
La Ragazza del Lago/The Girl by the Lake

(2007年 イタリア)
監督/アンドレア・モライヨーリ
出演/トニ・セルヴィッロ(サンツィオ刑事)
   ネッロ・マーシャ(アルフレード)
   ファウスト・マリア・シャラッパ(シボルディ)
   アレッシア・ピオヴァン(アンナ・ナダル)
   マルコ・バリアーニ(ダヴィデ・ナダル)
   デニス・ファゾーロ(ロベルト)
   サラ・ダマリオ(ジャーニ検察官)
   ジュリア・ミケリーニ(フランチェスカ)
   アンナ・ボナイウート(サンツィオの妻)
   ファブリツィオ・ジフーニ(コッラード・カナーリ)
   ヴァレリア・ゴリーノ(キアラ・カナーリ)
   フランコ・ラヴェーラ(マリオ)
   オメロ・アントヌッティ(マリオの父)
公式サイト

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イタリア的、恋愛マニュアル

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

恋愛のさまざまな過程にある4組のカップルのオムニバス。失業中の若者トンマーゾは一目惚れしたジュリアにアタックするが、なかなか相手にしてもらえない。バルバラとマルコは倦怠期を迎えた夫婦。婦人警官のオルネッラは夫ガブリエーレの浮気を知って怒り心頭。妻が家を出てしまった小児科医ゴッフレードは書店で購入した「恋愛マニュアル」を読んで努力する。

思ったこと

思っていた以上に引き込まれて、観終わったあとには、なんだか前向きな気分になった♡
なんか、イタリア人も考えてることは私たちとそう変わんないのかな〜って。
感情表現はすっごいけどね。

1話目「めぐり逢って」
トンマーゾは頭のネジが1、2本抜けてそうな感じで、明るいバカってかわいいな〜、いやでも空気読んでくれ・・・迷惑極まりない、ウザイ、とはいえ一途な感じがなかなか・・・、バカだけど・・・と、こちらの感情も二転三転させられておもしろい。
いやー無理でしょ、って感じだったのに、めげずに押しまくるのってけっこう有効?
就職活動もうまくいかなくってお金もなくルームメイトにいろいろ借りまくっているくせに、暗くなったり卑屈になったりしないところがいいね。
冷たい言葉できっぱり退けようとするジュリアに向かって、トンマーゾがぬけぬけと「お嬢さん。ファンは大切にしなきゃ」と言うのにウケた。
そっか、ファンは大切にしよう・・・(笑)。

2話目「すれ違って」
倦怠期にあるカップル。
食卓で、マルコが音を立てて食べるのを見て、バルバラの心の声「彼は変わってしまった・・・まるで憑依」というのに、吹き出す。
憑依・・・永久の愛を誓った相手でも、何かに憑依されちゃあ、そりゃ愛を貫くのも難しいよね、うんうん。
そうは言っても関係を修復させようと必死なバルバラに対して、マルコのイヤミあふれるもの言い、相当神経にさわる。
うーん、ここまでの状態から復活って・・・ありえるかな?

3話目「よそ見して」
き、キョーレツな女、オルネッラ・・・。
「エロおやじ!」「豚野郎!」「あんたなんかカビよ!」
なりは小柄だが、触るとヤケドするぜ。
夫の浮気の腹いせに交通違反切符を切りまくって、あからさまに職権乱用だし。
こうまで自分の感情をはっきりと出してものを言うのは日本においては人格的な罪だから(特に女にとって)、見ていてちょっと不安になるな〜。

4話目「棄てられて」
出て行った妻に留守電で「愛してる、愛してる・・・」と告げたら、見知らぬ家への間違い電話だったとか。
久しぶりに会った憧れの同級生の無惨な変わりっぷりとか。
看護婦に誘われて部屋まで行ったところ、夫の突然の帰宅にあたふたとベッドの下へ、窓の外へと逃げるとか。
情けな系の男が翻弄される古典的なコメディって感じだけど、きっちりおもしろい。
そして、求めよ、さらば与えられん。って感じですかね。

息をするように恋愛しているのかと想像していたイタリア人も、「恋愛マニュアル」なんてものを読むんだな。
しかも全然役に立たなそうな・・・(笑)。
誰もが愛の指南を求めていて、しかも完璧なお手本なんてものはどこにも存在しなさそうだ、ということが分かった。

イタリア的、恋愛マニュアル
Manuale D'amore

(2005年 イタリア)
監督/ジョヴァンニ・ヴァロネージ
出演/シルヴィオ・ムッチーノ(トンマーゾ)
   ジャスミン・トリンカ(ジュリア)
   マルゲリータ・ブイ(バルバラ)
   セルジオ・ルビーニ(マルコ)
   ルチャーナ・リッティツェット(オルネッラ)
   ディーノ・アッブレーシャ(ガブリエーレ)
   カルロ・ヴェルドーネ(ゴッフレード)
   アニタ・カプリオーリ(リヴィア)
   フランチェスコ・マンデッリ(ダンテ)
   ロドルフォ・コルサート(アルベルト・マルケーゼ)
   サブリナ・インパッチャトーレ(ルチアーナ)
公式サイト

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クィーン

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

チャールズ皇太子と離婚したダイアナ元妃は、1997年8月30日、恋人とともに乗った車がパパラッチに激しく追われて大破し、帰らぬ人となる。その連絡を受けたエリザベス2世は、公式な声明を発することもなく、生家を尊重して内輪の葬儀で済ませると言う。元妃の死を悲しみ、冷たい対応の王室に反感を抱く国民感情を鑑み、首相になったばかりのブレアは女王に再三の提言をする。

思ったこと

とにかくこんな映画が撮られているということにビックリだ。
たった10年前に起きた有名な事件の、当事者の微妙な心理を扱ったフィクション。
登場人物にはまだこの世で要職についている人がいっぱいいるというのに・・・。
これが本当に起こったことだと信じてしまいそうになるけど、いいんかな・・・。
現実ってこんなストーリー仕立てに進んでいるわけなくて、もっと混乱して多層的なものであるだろうのに、「こういうことがありました」「こういうふうに思ってました」と決めちゃってるみたいで、観てて落ち着かない。
ブレア首相が、この映画でのヒーロー?
女王とブレアとの関係が美しく描かれすぎという印象。
その他の実在の人々が皮肉な描かれ方をしているのも気になる。
本当にこういう人たちなのかなー。
ファーストレディであるシェリー・ブレアは、どんくさい所作でエレガンスからほど遠く、王室に対する尊敬を持ち合わせない。
エディンバラ公フィリップは、鹿狩りのことばかり気にしてる。
チャールズ皇太子は、元妻のダイアナを「良き母だった」と持ち上げて死を悼む一方、保身に走ってブレアにすりよる。
本当のフィクションだと割り切って観られれば、もっとちゃんと女王とかに感情移入できたと思うんだけど。

ダイアナ妃といえば、“世紀の結婚”として子供の頃にTV特番を観たのがすごく印象に残っている。
『小公女セーラ』みたいな絵で、チャールズ皇太子とのロマンスがアニメで描かれてた。
その後は興味が薄れてニュースをなぞる程度で、特に思い入れもなかった。
しかしダイアナがパパラッチに追われる場面、一人の人間として、そんな状況にさらされるという状況にゾッとしますね。

女王であるということの重圧には考えさせられる。
世論にバッシングを受ける日・・・「その日はやってきます。ある日、突然、予告もなく」。
ブレアに語るエリザベス女王の言葉が重い。
「自分のことは二番。いつも国民のことを第一に考えてきた」という女王と国民の関係は、そのまま、親と子供たちとして置き換えられそう。
日本の皇室のことを考えてみても、高貴な方々って本当に不自由だし重荷を抱えていて、そこから逃れることもできなくて大変そうだ。

クィーン
The Queen

(2006年 イギリス/フランス/イタリア)
監督/スティーヴン・フリアーズ
出演/ヘレン・ミレン(エリザベス2世)
   マイケル・シーン(トニー・ブレア首相)
   ジェームズ・クロムウェル(エディンバラ公フィリップ)
   アレックス・ジェニングス(チャールズ皇太子)
   シルヴィア・シムズ(皇太后)
   ヘレン・マックロリー(シェリー・ブレア)
   マーク・ベーズリー(アレステア・キャンベル)
   ロジャー・アラム(ロビン・ジャンブリン)
公式サイト

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明日へのチケット

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

オーストリアでの仕事を終えた大学教授は、飛行機が欠航したため列車で帰途につく。車内で仕事をしようとするものの、チケットを手配してくれた仕事先の美しい女性秘書への想いがつのって・・・。太った中年女性が、青年フィリッポをともなって乗車してくる。自分勝手にふるまう傲岸不遜な女性にフィリッポはだんだん耐えかねてきて・・・。スコットランドからやってきた3人の少年たちは、愛するサッカーチームのローマでの試合を楽しみにうかれていた。アルバニア出身の少年と知り合って仲良くなるが・・・。

思ったこと

3人の監督による3つのお話が、ローマへと向かう鉄道列車の中で展開される。
映画の解説には「オムニバス形式ではない」と書いてあるが、こういうのオムニバスっていうんじゃないのかな〜。
アルバニア人家族が共通して登場するけれど、お話はそれぞれ独立している。
鉄道旅行をしているときの、規則正しく刻む列車の振動、窓の外を流れる風景、人々のざわめき・・・などを実際に感じている気分に。
たまたま乗り合わせた見知らぬ人たちを観察して、どんな人生を送っているんだろうと想像しているみたいで楽しいね。

1話目:エルマンノ・オルミ監督。
食堂車の指定席でコース料理が供される?
ここに座っている人たちは、ずっとこの席にいるの?
そういう種類の列車もあるのかな?
ヨーロッパの鉄道には何回か乗ったことがあるけれど、食堂車も利用してみたかったな〜(次の機会には絶対・・・!)。
真面目そうな初老の教授が、ぼんやりと妄想にふけっている様子が可笑しい。
自分も列車の中で、いまいち読書とかに集中できないとき、何とはなくしょうもないことを考えていることが多いから、他人とは思えません。

2話目:アッバス・キアロスタミ監督。
こ、このおばちゃんの自己チューぶりはどうしようもないな!
でも本人も決して楽しくなさそうな感じ・・・けっこうツライ人生を送ってきてるんじゃないかと思わせる・・・だとしても、この性格じゃあ同情できないけど!
同行しているフィリッポが謎な雰囲気で、最初息子かな?と思ったんだけど、もしかして訳ありの年下の恋人?かと疑い、やがて兵役義務で将軍の未亡人にお供しているのだということが分かった。
フィリッポを探してさまようおばちゃんは、自業自得なんだけど、やっぱりなんだか哀れ・・・。
でもきっと性格直んないんだろうね。

3話目:ケン・ローチ監督。
いかにも田舎っぽい男の子たちがはしゃいでいるのが微笑ましい。
クスッと笑えるユーモラスな描写が交じっているところもいい。
ストーリーはちょっとドキドキしてしまう展開。
心がほんのり温かくなる結末へ着地してくれたので、後味良かった。
なんていうのかな、人生悪いことばかりじゃないよ、っていう感じ・・・。

明日へのチケット
Tickets

(2005年 イタリア/イギリス)
監督/エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチ
出演/カルロ・デッレ・ピアーネ(教授)
   ヴァレルア・ブルーニ=テデスキ(秘書)
   シルヴァーナ・ドゥ・サンティス(未亡人)
   フィリッポ・トロジャーノ(フィリッポ)
   マーティン・コムストン(ジェムジー)
   ウィリアム・ルアン(フランク)
   ガリー・メイトランド(スペースマン)
   ブレルタ・チャハニ(アルバニア人一家の女の子)
   クライディ・チョーライ(アルバニア人一家の男の子)
公式サイト

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麦の穂をゆらす風

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1920年、イギリスの弾圧に耐えかねたアイルランドの民は、独立を求めて武装し抵抗を始めていた。デミアンは医師になる夢をあきらめ、兄テディと共に闘う道を選ぶ。激しい戦闘が続いた後、とうとうイギリス軍が撤退し、講和条約が結ばれた。喜びもつかの間、アイルランドに不利な条約の内容をめぐって意見が対立し、かつての仲間が銃を向け合う内戦へと突入する。

思ったこと

緑濃くみずみずしい大地と、苛酷な人間の運命との対比。
アイルランド独立闘争はよく映画に出てくるのでなんとなくは知っていたけれど、どういうふうに始まって、どういうことが起こっていったのか、よく分かり考えさせられる映画だった。

冒頭、17歳のミホールが、「マイケル」と英語名を名乗らなかった、ただそのために、イギリス軍人に暴行を受けて殺されてしまう。
あまりの理不尽さにショックを受ける。
しかし、私たち日本も、かつて他国の人に日本語を強要した歴史があるわけで・・・。
権力をふりかざしてアイルランド人を踏みつけるイギリス軍は醜く、その姿がイギリス人監督によって描かれたということに感銘を受ける。
拷問や焼き討ちのシーンは目をそむけたくなるほどのむごさだ。
ともすれば自虐に陥ってしまいかねない描写だが、アイルランド人には誇りと勇気があって、イギリス人は残虐で横暴などという単純な話ではない。
人は環境や状況によってこんな風にもなりうる・・・歴史を知り、いろいろな立場の人に感情移入し、自分だったらどう行動できるか想像力を養うことに、映画を観るひとつの意味があるのかなと思う。

イギリスという敵に向かってひとつになっているときよりも、かつて助け合った仲間同士で争わねばならなくなった内戦時の傷はさらに深い。
求めている理想は同じはずなのに・・・。
人間って、信念のために生きたり死んだり殺したりできるんだな・・・。
皆が幸せになれればいいのに・・・なんて言葉は月並みすぎて、ほとんど意味がないでしょうか。
でも言わずにはおれないけど。

闘いや政治の表舞台に出ているのは男だけど、強く情が深い女たちの姿も印象に残る。
家を焼かれた老婆ペギーが、「私はどこへも行かない。鶏小屋を掃除して寝るよ」と言ってきかない場面が胸を突いた。
シネードの短い髪を包んだスカーフがほどかれて、ダミアンと抱き合うシーンは、数少ないほっとできるひとときだった。
毅然とした裁判官リリーがかっこよかった!

麦の穂をゆらす風
The Wind That Shakes the Barley

(2006年 アイルランド/イギリス/ドイツ/イタリア/スペイン)
監督/ケン・ローチ
出演/キリアン・マーフィー(デミアン)
   ポードリック・ディレーニー(テディ)
   リーアム・カニンガム(ダン)
   オーラ・フィッツジェラルド(シネード)
   メアリー・オリオーダン(ペギー)
公式サイト

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家の鍵

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

恋人が出産で死んだという事実に耐えられず、生まれた子供にも会わず生きてきたジャンニ。15年経って初めて、障害を持った息子パオロに会い、ベルリンのリハビリ施設へ送り届けることになった。実の父子とはいえぎこちない道中。施設では、重い障害を抱えた娘の世話をするニコールと出会う。

思ったこと

実の息子を亡き恋人の姉夫婦に任せたまま放っておいたジャンニは、甘い顔立ちでナイーヴでやさしい性格。
今まで会わなかったのも、冷たかったからというより、現実を受けとめられない弱い性格だったせいなのだな・・・と想像できる。
心身に障害を抱えた15歳のパオロと一緒に過ごすうちに、だんだんパオロのことを愛しく思ってきて、たぶん罪悪感も入り混じって、「一緒に暮らそう」などと言い出す。
それは感動的なシーンなのかもしれないが、私にはなんだか信用ならないと感じられてしょうがなかった。
その気持ちがウソだとは言わないけど・・・。
だって、一緒に行動したのは、たったの数日じゃない〜?
感情で動くセンチメンタルなジャンニ。
リハビリの邪魔をしたり、施設から連れ出してしまったり、それって本当にパオロのためになっていることなのかなぁ〜。
家に戻ったら、現在の奥さんと子供もいるわけだし。
それに、今まで苦労を重ねつつパオロを育ててきた伯父伯母の気持ちはどーなる。

対照的なのが、やさしげな風情でありながら、積んできた苦労の重みを感じさせるニコール。
「イタリアに留学した頃は、将来の夢がいろいろあったわ」と言うニコールが、「今は何の仕事をしているの?」とジャンニに問われて、「何も」「何もしてない。娘が生まれてから・・・」と答える。
才能のある女性が、思い描いていた将来の可能性を捨てなければならないという状況。
もちろんそういうことは男女問わずあるとは思うけど、子育てとか介護問題とか、やはり圧倒的に女性が引き受けなければならない場合が多いよね。
そういう現実を考えると、女のほうが一般的にリアリストにならざるを得ないのは必然かもしれない。
貴い仕事だというのはひとつの真実だし、身をささげる姿は美しいとは思うけど、心のうちにうずまくであろう葛藤を思うとツライ。
ニコールだって聖女じゃないから、娘を疎ましく思ってしまう時もある。
普通の子育てだってそういうことはあるだろうのに、ましてやニコールの娘は、ずっと手が離れない永遠の子供なのだから。
周りの人間は、せめてその思いを汲んであげるくらいしかできないのかな・・・。

家の鍵
Le Chiavi di Casa/The Keys to the House

(2004年 イタリア)
監督・脚本/ジャンニ・アメリオ
出演/キム・ロッシ・スチュアート(ジャンニ)
   アンドレア・ロッシ(パオロ)
   シャーロット・ランプリング(ニコール)
公式サイト

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ホテル・ルワンダ

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1994年、アフリカのルワンダで、長くくすぶっていた民族間の扮装が激化。フツ族によるツチ族の虐殺は、100日間で100万人にも上った。にもかかわらず、国連は平和維持軍の撤退を決める。高級ホテル、ミル・コリンの支配人を勤めるポール・ルセサバギナは、ツチ族である妻と子供たちを守るために奔走し、行き場をなくした難民たちをホテルに受け入れていく。

思ったこと

良くも悪くも、ハリウッド的な造りの映画だなーと思った。
非道な敵に対して一人で立ち上がり、家族や同胞を守り抜く、勇気あるヒーロー・・・。
実話が基だとはいえ、ちゃんと映画としてエンターテインメントになっている。

19世紀後半のルワンダでは、ツチ族の王のもと、ツチ族が強い力をもっていた。
第1次世界大戦後、ルワンダはベルギーの支配に置かれることとなり、統治を円滑に進めるためにツチ族があらゆる面で優遇され、人種間の差異をあおった。
1950年代に入ると、ベルギーはひるがえってフツ族の反乱を後押しし、政権をとったフツ族が圧制をしく。
1990年にツチ族を中心にルワンダ愛国戦線(RPF)が結成され、内線が勃発する。
・・・というような歴史的経緯は、公式サイトの歴史ページを読んで、初めてよく分かった。
映画では、「フツ・パワーでツチ族のゴキブリどもを皆殺しにしろ!」とラジオ放送で叫んでいるフツ族が、ただ凶悪な人たちに見える。
狂ったように鉈を振り回すフツ族の民兵は、震えるほど恐ろしいし。
だから、ポールとその家族にすっかり感情移入してしまったあとでは、彼らを追うフツ族がRPFの銃弾に倒れると、「やった!」と爽快にさえ感じてしまうのだ。
内戦というからには、ツチ族がフツ族を殺している現場だってあるだろうのに・・・。
私たちは「フツ族って恐い」「ポールえらい」という単純な印象をもってしまうのを警戒しなくてはならないと思う。
これだから、情報って恐ろしい。

ポール・ルセサバギナは、ルワンダ人のなかではかなりのエリート。
最初は家族を守ることだけを考えていて、隣人が襲われているのを、見て見ぬふりする。
卑怯にも見えるシーンだけど、現実的だと思った。
力もないのに「オレがすべての人間を救うんだーっ!」とやみくもに突進するのは、誇大妄想的ともいえるからね・・・。
皆を救うどころか、家族さえ守れなかったという結末だってありえたんだから・・・。
ポールは、逃げてきた人々をホテルにかくまい、食料を調達するために、必死で自らが持てる資金や人脈を駆使し、媚びるようにして敵を懐柔する。
やっぱり誰かを守れるほどの人間になるには、勇気とか腕力とかだけじゃなくて、知恵、財力、政治力なども必要だよなあ。

私はずっと、他民族の虐殺が起こるのは、相手のことをよく知らないために、理解できない薄気味悪い存在として、同じ人間と感じられなくなってしまうためだと考えていた。
だから世界平和の第一歩は、多様な人々や文化を知り、個別で人間的な関係をひとつひとつ結んでいくことだと漠然と考えていた。
しかし、歴史をひもとけば、このルワンダでの事件しかり、ナチス支配下のポーランドの村でユダヤ人の集団殺人を行ったのはポーランド人だったとか、民族浄化という忌まわしい言葉が使われたユーゴスラヴィア紛争だとか、関東大震災時の朝鮮人暴行とか、昨日までの隣人を虐殺した例はいくらでもある・・・。
答えは簡単に出ないけど・・・いつか重要な局面に向かいあったとき、後悔しないような行動ができる強い人間になりたい。
「世界の人々は虐殺の映像を見て・・・“怖いね”と言うだけでディナーを続ける」
ジャーナリスト、ダグリッシュの言葉を聞いたときの、我が身を振り返ってすくんでしまうような感覚を忘れないでいたい。

ホテル・ルワンダ
Hotel Rwanda

(2004年 南アフリカ/イギリス/イタリア)
監督・脚本/テリー・ジョージ
出演/ドン・チードル(ポール・ルセサバギナ)
   ソフィー・オコネドー(タチアナ・ルセサバギナ)
   ニック・ノルティ(オリバー大佐)
   ホアキン・フェニックス(ジャック・ダグリッシュ)
公式サイト

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ヴェニスの商人

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

16世紀のヴェニスでは、ユダヤ人はゲットーに隔離され迫害されていた。貿易商人アントーニオは、若き親友バッサーニオが美しき女相続人ポーシャに求婚するための資金を、自らが保証人となってユダヤ人シャイロックから借りる。「期限内に返せない場合は、アントーニオの肉1ポンドを引き替えとする」という条件は、アントーニオの船がすべて難破したために、実行されることになったが・・・。

思ったこと

個人的な思い出になるが、私が始めて『ヴェニスの商人』を知ったのは、小学校低学年のときの学芸会で、6年生のお兄さんお姉さんたちによるお芝居だった。
なんておもしろいんだ!!と感動し、これが後の演劇好きの端緒となった気がする。

とにかく、お話としておもしろい。
でも、映画自体は淡々と進んで、なんだかあまり感情的な揺れ動きを感じなかった。
もう少し盛り上げてほしかったな・・・。
窮地に陥ったアントーニオを、颯爽と現れた男装のポーシャが助け、やったー!と爽快な気分になれるかと思いきや、観終わった後に残る気持ちは、ただただユダヤ人の悲哀。
哀れ・・・哀れなり、シャイロック・・・。

不思議なのだけれど、“金貸しはキリスト教に反する”“高い利子を取るなんて”と怒って蔑むくらいなら、お金を借りなきゃいいんだと思うのよね・・・。
そんなに言うなら、困っている人はキリスト教の仲間が無利子で助けてあげればいいのではないの・・・。
別にユダヤ人金貸しも、無理矢理貸し付けているわけではなかろうに。
“強欲で血も涙もない”の代名詞になっているかのようなシャイロックだが、とにかく痛めつけられているので、ヒネてしまうのも無理なかろう・・・と同情してしまった。
こうもシャイロックに肩入れさせるのって、アル・パチーノの力量か。
それとも演出の意図かな?

「肉1ポンドを切り取る」シーン。
胸を剥き出しにイスに縛られたアントーニオが、恐怖に顔をひきつらせ、肌には汗が浮かぶ。
シャイロックがナイフを手に近づく。
実際に目にすると、ぞくぞくと緊張感が高まる。
次にどうなるか知っているにもかかわらず、恐ろしかった・・・。
でも、このオチって、なんか“一休さん”ぽいよね。

ゴンドラが運河を行き交い、人々は優雅なローブやドレスを身にまとい、仮面をかぶった男女が視線を交わす、16世紀ヴェニスの情景はなんとも魅力的。
イタリア旅行したいなー!という気持ちが募ったけれど、いくら観光旅行しても、実際にこういう雰囲気に身をひたせるわけではないんだよね。
今や、どこへ行っても観光客の姿があるのだろうし(自分も含めて)。
だから私は世界各国の映画を観て、そこに入り込んでいる気分を味わうのだ・・・と再確認した。

ヴェニスの商人
The Merchant of Venice

(2004年 アメリカ/イタリア/イギリス/ルクセンブルク)
監督/マイケル・ラドフォード
原作/ウィリアム・シェイクスピア
出演/アル・パチーノ(シャイロック)
   ジェレミー・アイアンズ(アントーニオ)
   ジョセフ・ファインズ(バッサーニオ)
   リン・コリンズ(ポーシャ)
   クリス・マーシャル(グラシアーノ)
   ヘザー・ゴールデンハーシュ(ネリッサ)
   ズレイカ・ロビンソン(ジェシカ)
   チャーリー・コックス(ロレンゾー)
公式サイト

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理想の女

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

ニューヨーク社交界の華、新婚1年目で幸せいっぱいのウィンダミア夫妻が、南イタリアのアマルフィにバカンスにやってきた。メグはブティックで、男性に対する奔放なふるまいで評判の悪いアーリン夫人と出会う。そのうち、メグは、夫とアーリン夫人が密会していることを知ってしまう。

思ったこと

1930年代のヨーロッパ社交界。
服装や一挙一動が常に周囲から観察され噂されて、上流階級の人たちも大変だな。
金持ちのじーさんばーさんたちの会話が、機知に富んでて楽しい。
これが、“ウィットやユーモア”ってやつですか?
当時のファッションや、高級ホテルの装飾なども見ごたえがある。
こういう一部の富める人たちのおかげで、美しいものが作られ残されてきたのだなあ。
しかしこの時期のすぐあと第二次世界大戦だよね。
みんな、どうなっちゃったかな・・・。

ヘレン・ハントは、湿ったベルベットのような声がセクシー。
おでこにさざなみのようにシワがよるのが、なんだか優雅に見える。
男から金をしぼりとって生きる女だけれど、過去についての弁明は結局されないけど、やっぱり魅力的で、許してしまってもいいかな〜という気にさせられる。
(コムスメに勝つ!とか言うまでもなく、当たり前のよーに勝ってる。)

Goodwoman01_1スカーレット・ヨハンソンは『ゴーストワールド』で見たとき、顔だちはきれいだけど、あまりパッとした印象が残らない女優・・・と思った覚えあり。
最近は躍進いちじるしいようだね。
ハリウッドでモテモテらしいが、ちょっとスキのあるような感じがそそるのかしら。
今作は1930年代の話であるのに、なんだか現代っ子風の雰囲気が漂う。
若くて純真で貞淑で、それゆえにふらふらしてしまうコムスメという役どころは、似合っていたともいえる。

初対面からメグに甘い言葉をささやき続けるダーリントン卿は、どこを叩いても誠実さのかけらも出てこないような男だけど、私はけっこうこういう人物好き。
友達にいたらよさそう。
金離れいいし、楽しいこといろいろ知ってそうだし。

印象に残ったセリフ
「噂されるよりもっと悪いのは、噂されないことだ」
「私は若くも美しくもなく太っているけれど、金持ちという取り柄がある」
「涙は醜い女の逃げ道。悲しいとき、美しい女はショッピングをするのよ」

理想の女
A Good Woman

(2004年 スペイン/イタリア/イギリス/ルクセンブルク/アメリカ)
監督/マイク・パーカー
原作/オスカー・ワイルド
出演/スカーレット・ヨハンソン(メグ・ウィンダミア)
   ヘレン・ハント(ステラ・アーリン)
   マーク・アンバース(ロバート・ウィンダミア)
   スティーブン・キャンベル=モア(ダーリントン卿)
   トム・ウィルキンソン(タピィ)
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オリバー・ツイスト

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話
19世紀のイギリス。孤児オリバー・ツイストは、救貧院を追い出され、引き取り先の葬儀屋からも逃げ出し、遠くロンドンまで歩いて行った。そこで出会ったのが、スリの少年ドジャー。ボスの老フェイギンと仲間の少年たちにやさしくされ、オリバーは安心する。ある日、オリバーは親切な紳士ブラウンロー氏と出会って・・・。

思ったこと

Oliver01自分の好きなタイプの物語と思って観に行ったのだけど・・・最初から最後まで、特に心を揺り動かされることがなかった。
ずっと昔、ミュージカル映画『オリバー!』を観たときは、もっとワクワクした記憶があるんだけどなー。
主役のオリバー・ツイストが、きれいな顔のいい子ちゃんというだけに思えて、なんだか感情移入できない。
きれいな顔のいい子ちゃんだったら、いつか誰かが助けてくれるっていうこと??
小公女セーラを思い出してしまった(私はセーラも好きじゃないのだ)。
フェイギンやスリ仲間の少年たちとの交流をもっと掘り下げてあれば良かったのかな・・・?
最後、ドジャーやチャーリーたちは、どうなっちゃったんだ・・・?

この映画で最も見ごたえがあったのは、再現された19世紀イギリスの風景だ。
猥雑な騒々しさに満ちているロンドンの下町、レンガ壁と石畳に囲まれた暗い小路、行き交う馬車、霧のロンドン橋。
これらが全部、このために造られたセットだというからすごい。
時代もの映画を撮るのって、大変だなぁ〜と思ってしまった。
全体をとおして、セピアがかったような色合い、しょっちゅう降っている雨も、物語世界の陰鬱な雰囲気を高めている。

それから、ヨーロッパの人たちって、顔・体型ともにバリエーションが幅広くておもしろい。
デフォルメされた感じの登場人物たちは、いかにも物語の中って感じで、いいね。

ほんのちょっとのおかゆしか与えられず、「おかわりが欲しい」と言ったため救貧院を追い出されたオリバー・ツイスト。
孤児ということで、まともな人間扱いをしてもらえない。
現代日本の暮らしって、とてつもなく豊かなものなんだなあ、と改めて感じさせられる(・・・と、一応教訓らしきものも感じておこう)。

ところで、私はエンドロールをじっくり見るのが好きだ。
たまにおもしろい情報を見つけられることがあるから。
今作で珍しかったのは、コスチューム・ブレイクダウン・アーティストなるもの。
衣装をそれらしくぼろぼろに加工する仕事なんだろうね。

オリバー・ツイスト
Oliver Twist

(2005年 イギリス/チェコ/フランス/イタリア)
監督/ロマン・ポランスキー
原作/チャールズ・ディケンズ
出演/バーニー・クラーク(オリバー・ツイスト)
   ベン・キングズレー(フェイギン)
   ハリー・イーデン(ドジャー)
   ジェイミー・フォアマン(ビル・サイクス)
   エドワード・ハードウィック(ブラウンロー氏)
   リアン・ロウ(ナンシー)
公式サイト

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