君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1956年、ソ連の支配的な共産主義政権の下にあったハンガリー。ポーランドでの民衆蜂起に触発され、ブダペストでも独立学生連盟が中心となって改革派指導者ナジ・イムレを首相に望むデモを行った。しかし秘密警察AVOが市民に発砲し、ソ連軍の戦車が街に入って戦闘が始まる。スター水球選手のカルチは、独立学生連盟の中心となって活動するヴィキに惹かれるうち、親友ティビが止めるのもきかず、オリンピックへの夢を捨てて運動に身を投じていく。

思ったこと

強圧的な国家に対して自由を求める民衆の戦い、威信をかけたスポーツ試合、戦下での恋人たち・・・いかにもドラマティックな舞台だてだが、それほど遠くない過去、本当に起こった歴史的事件を背景にしていることを思うと胸が熱くなる。
普段の生活の場である街に、ガタガタと戦車が入り込んでくる様子にはゾッとする。
それは、市民である自分たちに向けられた圧倒的な武力・・・。
こういうストーリーを観るといつも、自分がその場にいたらどうするのかと考えてしまう。
何が正しいことか決断して行動できるのか、恐ろしさに屈せずにいられるか、保身のために密告せずにいられるか、扇動されて愚かなことをしてしまわないか、家族とかに止められたらふりきれるのか・・・。
カルチは最初、水球選手として活躍することで頭がいっぱいで、政治については興味を持っていなかったが、ヴィキの真剣な思いに影響され、友人があっけなく殺されてしまうのを目の当たりにして、今までのままではいられなくなる。
カルチみたいにもてそうなスポーツマンが、固くつれないヴィキに惹かれていくって、ちょっと無理矢理なような気もしたけど。

自由ハンガリーラジオが世界に向けて必死に叫ぶ。
「私たちは懸命に戦っています。大至急、言葉でなく行動で助けを示してください。SOS、SOS!」
その悲壮な響きが激しく迫ってくる。
結局、このときの運動は武力で鎮圧されてしまい、民主化が実現するのは1989年まで待たねばならない・・・。
ハンガリーだけでなく、チェコの「プラハの春」「チェコ事件」や、ポーランドの「連帯」など、東欧革命に連なる歴史は、本当に心に突き刺さってくるなぁ。
そして今このときにも、現実世界で、国家の抑圧と戦っている人々がいるということも忘れてはならない・・・。

水球の試合シーンには、劇中の観客と熱狂を共有!
スポーツって代理戦争だというのを実感する。
実際にあった“メルボルンの流血戦”が語り継がれるのもむべなるかな。
でもねー、ソ連チームをちょっと悪者に描き過ぎではないかねー?
ひと昔前の、悪者=ナチス、ソ連という単純な図式の感じ。
そういえば社会科で「冷戦」を勉強した子供の頃は、ソ連ってすごく恐い存在に感じられたなぁ・・・。

君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956
Szabadsag, Szerelem/Children of Glory

(2006年 ハンガリー)
監督/クリスティナ・ゴダ
出演/イヴァーン・フェニェー(サボー・カルチ)
   カタ・ドボー(ファルク・ヴィキ)
   シャーンドル・チャーニ(ヴァーモシュ・ティビ)
   カーロイ・ゲステシ(水球チーム監督)
   イルディコー・バーンシャーギ(カルチの母)
   タマーシュ・ヨルダーン(カルチの祖父)
   ダーニエル・ガーボリ(カルチの弟ヨージ)
   ペーテル・ホウマン(フェリおじさん)
   ヴィクトーリア・サーヴァイ(エステル)
   ツェルト・フサール(ヤンチ)
   タマーシュ・ケレステシュ(イミ)
公式サイト

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華麗なる恋の舞台で

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1938年のロンドン。人気、実力ともにナンバーワンの舞台女優であるジュリアは、40代半ばにして人生に倦怠感を感じていた。しかし、ジュリアの熱烈なファンだという若者トムと恋に落ちて、毎日が彩りを取り戻す。恋も仕事も家庭生活も順風満帆かに思えたが、トムは若い女優エイヴィスに心変わりし、ジュリアは心乱れる。

思ったこと

映画が始まってからしばらく、アネット・ベニング演じるジュリアのしわっぽい顔が気になってしょうがなかった。
遠くから見たり、ベールをかぶっていたりすると非常に美人なんだけど、アップになるとビミョー。
45歳にしては老けて見えると思う。
ヨーロッパの女は何歳になっても恋愛現役よ!って話かなぁ〜・・・と最初は思ってた。
でも、息子ほどにも若い恋人と戯れて、媚びを含んだ嬌声をあげている姿、決してステキとは言えない・・・。
そして、心変わりしたトムにすがる様子。
“恋愛に年齢は関係ない”という考えでいたいけど、やっぱり年をとるってイヤかな〜、自分が見えなくなっちゃうとみっともないな〜と思わせられる・・・などと考えていたら、新作舞台に上がったジュリアのしたたかな行動!
なんつー爽快感!
イエー!!
ジュリアはいくつになってもジュリア。
強く賢く美しく年をとっていくわよー!
前半がローだった分、加速度的な気分の高揚がたまりません。

女優としての才能あふれるジュリアは、自分で意識している以上に、実生活の言動にお芝居が溶け込んでしまっている。
でも、そういうとこ、多かれ少なかれ誰でもあるよね。
恋愛関係だけじゃなく、仕事上だって、家族間だって、適度な茶番が潤滑油。
離れていこうとする恋人をいつものセリフと最高の所作で引き戻した後の、ジュリアの言葉がふるってる。
「男って単純、と心の底で軽蔑する気持ちに、気付かないわけにはいかないわ」
あはー。
男性が聞いたら「コエー」って感じでしょうが・・・。
それまで本当に恋にのめり込んでいるように見えたジュリアだが、やっぱり年齢相応の冷静な目と賢さも持っていたのだな。

こんなに後味がさわやかなのは、ジュリアが多くの友情関係を手にしているからだと思う。
才能を見出し導いてくれた演出家ジミー・ラングトンは、いつまでもジュリアの心に住んで助言を与え励ましてくれる。
チャールズと交わす男女間の友情は、ジュリアの人間的魅力の裏付けを感じさせる。
付き人のエヴィは、ジュリアのことを誰よりも見て理解し案じていて、ちょっと辛口な意見を言ったりするところもイイ。
賢い息子のロジャーは、母に苦言を呈しながらも、互いに理解しようという歩み寄りがある。
夫のマイケルとの関係から情熱は消え去ってるけど、深い信頼と愛情で結ばれた同志として、かけがえのない存在。
なんていうか、人生で一番大切なものって、やっぱ友情だよな〜との思いを新たにしました。
広い意味の友情・・・恋愛や家族愛にも含まれている・・・相手の人間性自体を慈しみ愛する、という気持ちのことです。

華麗なる恋の舞台で
Being Julia

(2004年 カナダ/アメリカ/ハンガリー/イギリス)
監督/イシュトヴァン・サボー
原作/サマセット・モーム
出演/アネット・ベニング(ジュリア・ランバート)
   ジェレミー・アイアンズ(マイケル・ゴセリン)
   ショーン・エヴァンス(トム・フェネル)
   ブルース・グリーンウッド(チャールズ)
   ミリアム・マーゴリーズ(ドリー)
   ジュリエット・スティーヴンソン(エヴィ)
   トム・スターリッジ(ロジャー)
   ルーシー・パンチ(エイヴィス・クライトン)
   マイケル・ガンボン(ジミー・ラングトン)
公式サイト

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敬愛なるベートーヴェン

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

1824年ウィーン。「第九」の初演を4日後に控えたものの楽譜が完成しないベートーヴェンのもとに、写譜師としてアンナが派遣されてきた。女だということで最初は冷たくあしらうが、彼女の才能を認め、次第にかけがえのない信頼をおいていく。不遜で尊大なベートーヴェンだが、難聴に苦しみ、甥のカールを一方的に溺愛していた。

思ったこと

冒頭、平原を走り抜ける馬車に乗ったアンナが、研ぎ澄まされた感覚で風景や人の表情をとらえ、全身が音楽と溶け合い、病床のベートーヴェンのもとへ駆けつけて「大フーガが聞こえました!」というシーンは感動的。
でも観終わってから思う・・・あれって、いつどこから向かって来たの〜?
だってベートーヴェンが倒れたときアンナはそばにいて、熱心に看病してたじゃん・・・。
住んでいたのも町中の修道院のはずだしさ〜(里帰りしてたの?)。

少し前にモーツァルトを描いた『アマデウス』を観返していたので、雰囲気とか共通する部分もあって、どうしても連想してしまう。
偉大な音楽家が、人間的にはちょっと・・・というのも似ているしね〜。
『アマデウス』は20年以上も前に作られたにもかかわらず今なお新鮮で引き込まれたけど、この映画はちょっと中途半端な観後感かな・・・。
自分の書いた曲をベートーヴェンにおちょくられて傷つくアンナも、必要以上に大げさな気がするし・・・。
ベートーヴェンは自分が神に近い存在であることを信じて疑っていないが、その傲岸不遜な性格は、超越的な才能と共存することで許される。
真面目な秀才のアンナは結局それを支える存在にしかなれなかった・・・いや、そんな存在になれただけでも素晴らしいといえるのかな。

クライマックスであるところの「第九」初演の舞台。
美しいシーンだけれど、なんでつい最近来たばかりのアンナがベートーヴェンの音楽性を完全に理解して助けられるの?とか、バルコニー席からアンナが丸見えだけどいいのか?とか、ふたりの絆が強く結ばれたのは分かったけどちょっと長過ぎ・・・とか気になって、いまいち盛り上がれず。
そのほか、アンナが楽譜に直しをいれたり、ベートーヴェンが橋の模型を壊したりなどのエピソードに、どうしても違和感がある・・・。

アンナ役のダイアン・クルーガーは正統派美形。
この時代のハイウエストの服ってかわいいよねー!
全体的に抑えたライティングで、きれいに映されてました。
でもあんまりおもしろみのない人だって感じる、私は。

ところでタイトルの「敬愛なる」って、日本語としてどーなんだ!?

敬愛なるベートーヴェン
Copying Beethoven

(2006年 イギリス/ハンガリー)
監督/アニエスカ・ホランド
出演/エド・ハリス(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)
   ダイアン・クルーガー(アンナ・ホルツ)
   マシュー・グード(マルティン・バウアー)
   ジョー・アンダーソン(カール・ヴァン・ベートーヴェン)
   ビル・スチュワート(ルディー)
公式サイト

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