once ダブリンの街角で

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

穴の空いたギターを抱え自作の曲を歌うストリートミュージシャンの男に、話しかけてきた女。チェコからダブリンに移り住んだ女は、仕事の合間に楽器店でピアノを弾くのを楽しみにしていた。ギターとピアノの音を合わせた日から、ふたりの心もだんだんと寄り添っていく。

思ったこと

手持ちカメラで画面がぐらぐら揺れる不鮮明な映像に、最初ちょっとウンザリ。
チェコから来た女の子(といっても子持ち)が、ストリートミュージシャンの男に「歌の相手はガールフレンド?」「どんな人?」「どうして別れたの?」などとしつこく質問してくるのにも辟易。
主演のふたりは特に美形でも個性的でもおしゃれでもないんだが、いかにも実在していそうな普通な感じがあって、だんだんと友人を見ているような気持ちになったよ。
でも感情移入はできなかった・・・。

路上で歌っている男にしつこく話しかけ、修理してほしい掃除機をゴロゴロ引きずってくる不思議ちゃんな女は、一緒に食事をしたり、男の家まで来たりする。
てっきり男のことが好きなんだと思うよねー。
最初は迷惑そうにしていた男だったが、「泊まっていかない?」という誘いを拒否られたのを境に、女を追いかけるほうに逆転する。
女の気持ちがいまいち分からねぇ〜どういうつもりで近づいたんだ?
惹かれあっているのに恋愛にはならない、でもただの友達というわけでもないふたりの関係。
男はロンドンの元カノを忘れられないのか、女は別居中のチェコの夫とどうなるのか、なんかもやもやしたまま話は進んでいくのでした。
紙一重で恋人同士に転びそうだったけどねー。
ま、そういうこともあるかってことで。

正直この映画で男が作り上げていく音楽はあんまり私の好みじゃない。
でも楽器店に展示されているピアノと、穴の開いたギターで即興デュエットするシーンには心躍った。
ちょっとたどたどしいのがリアル。
長らく楽器には触っていないけど、私も久しぶりに弾いてみたいな、という気持ちがむくむく湧いてきたよ。
そういえば、人と合わせるのって気持ちいいんだよね・・・ずっと忘れてた。
男が一念発起してデモCDを作る過程も高揚感があって楽しい!
スタジオの借り賃をねぎったり、銀行に融資を頼みに行ったり、路上バンドをスカウトしたり、徹夜で演奏を録音したり。
最初だるそうにしていたスタジオのエンジニアが、演奏が始まるとそのうまさにハッとするだなんて、そんなうまい展開・・・とも思うが、いい気分になれる。
主演ふたりは本物のミュージシャンだそうで、なかなか聴きごたえあります。

once ダブリンの街角で
Once

(2006年 アイルランド)
監督・脚本/ジョン・カーニー
出演/グレン・ハンサード(男)
   マルケタ・イルグロヴァ(女)
   ビル・ホドネット(男の父親)
   ダヌシュ・クトレストヴァ(女の母親)
   ゲオフ・ミノゲ(エイモン)
公式サイト

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麦の穂をゆらす風

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

1920年、イギリスの弾圧に耐えかねたアイルランドの民は、独立を求めて武装し抵抗を始めていた。デミアンは医師になる夢をあきらめ、兄テディと共に闘う道を選ぶ。激しい戦闘が続いた後、とうとうイギリス軍が撤退し、講和条約が結ばれた。喜びもつかの間、アイルランドに不利な条約の内容をめぐって意見が対立し、かつての仲間が銃を向け合う内戦へと突入する。

思ったこと

緑濃くみずみずしい大地と、苛酷な人間の運命との対比。
アイルランド独立闘争はよく映画に出てくるのでなんとなくは知っていたけれど、どういうふうに始まって、どういうことが起こっていったのか、よく分かり考えさせられる映画だった。

冒頭、17歳のミホールが、「マイケル」と英語名を名乗らなかった、ただそのために、イギリス軍人に暴行を受けて殺されてしまう。
あまりの理不尽さにショックを受ける。
しかし、私たち日本も、かつて他国の人に日本語を強要した歴史があるわけで・・・。
権力をふりかざしてアイルランド人を踏みつけるイギリス軍は醜く、その姿がイギリス人監督によって描かれたということに感銘を受ける。
拷問や焼き討ちのシーンは目をそむけたくなるほどのむごさだ。
ともすれば自虐に陥ってしまいかねない描写だが、アイルランド人には誇りと勇気があって、イギリス人は残虐で横暴などという単純な話ではない。
人は環境や状況によってこんな風にもなりうる・・・歴史を知り、いろいろな立場の人に感情移入し、自分だったらどう行動できるか想像力を養うことに、映画を観るひとつの意味があるのかなと思う。

イギリスという敵に向かってひとつになっているときよりも、かつて助け合った仲間同士で争わねばならなくなった内戦時の傷はさらに深い。
求めている理想は同じはずなのに・・・。
人間って、信念のために生きたり死んだり殺したりできるんだな・・・。
皆が幸せになれればいいのに・・・なんて言葉は月並みすぎて、ほとんど意味がないでしょうか。
でも言わずにはおれないけど。

闘いや政治の表舞台に出ているのは男だけど、強く情が深い女たちの姿も印象に残る。
家を焼かれた老婆ペギーが、「私はどこへも行かない。鶏小屋を掃除して寝るよ」と言ってきかない場面が胸を突いた。
シネードの短い髪を包んだスカーフがほどかれて、ダミアンと抱き合うシーンは、数少ないほっとできるひとときだった。
毅然とした裁判官リリーがかっこよかった!

麦の穂をゆらす風
The Wind That Shakes the Barley

(2006年 アイルランド/イギリス/ドイツ/イタリア/スペイン)
監督/ケン・ローチ
出演/キリアン・マーフィー(デミアン)
   ポードリック・ディレーニー(テディ)
   リーアム・カニンガム(ダン)
   オーラ・フィッツジェラルド(シネード)
   メアリー・オリオーダン(ペギー)
公式サイト

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