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ボーダータウン 報道されない殺人者

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

シカゴの新聞社で働くローレンは、上司ジョージから、アメリカとメキシコの国境にある町フアレスで起きている連続女性殺人事件の取材を命じられる。かつての友人ディアスを頼って地元のエル・ソロ新聞社を訪ねると、報道されていない犠牲者はこの15年間で5000人にも上ると衝撃の事実を聞かされる。そこへ、レイプの被害に遭ったエバが助けを求めてきた。

思ったこと

サイテーサイアク!
卑劣で凶暴で異常性欲の男どもは皆死んじまえ!と叫びたくなる導入部であった。
まだあどけない面影が残っている少女。
工場勤めでくたびれ、薄給の中から幼い妹のために人形を買った帰り道に、レイプして首しめて砂漠に埋めるなんて・・・。
男家族とか、いったい何をやっているんだ?誰か守ってくれる人はいないの!?と思うが、彼らもアメリカに出稼ぎに行ったりして不在ということなのか・・・。
何より怖ろしいのは、猟奇的な殺人者がいるということだけでなく、隠蔽しようとする大きな力の存在だ。
警察も政府も信用ならない・・・映画全体を覆っている圧倒的な無力感、逃げるしかない弱者の恐怖に震える。

これが実話を基にしたストーリーだというから怖ろしい。
同時に、こういう権力者側を告発する内容の映画を、ちゃんとサスペンスの文脈にのせて作り、公開できるアメリカという国の幅の広さも感じるなぁ。

北米自由貿易協定のせいで、国境の町フアレスでは、アメリカの企業がメキシコ人の安価な労働力を使い捨てにしていく。
貧しいメキシコ人たちがどうなろうと、政府や権力者、金持ちは知ったことではない・・・。

ローレンだって最初は、自分のキャリアのためにいやいやながら取材に出かけたのだ。
しかし、エバを助け、事実を調べていくうちに心の底から親身になっていく。
出会ったばかりの外国人であるローレンに心を委ねていくエバ、取材相手の少女エバを全身全霊で守ろうとするローレン、ふたりの信頼関係に胸が熱くなる(同性同士で、ラヴがからんでいないのが、より感動的なのかも)。
ローレンの中では、正義感と同時に、抑圧されていた個人的な事情が起爆剤となっていたのだろう・・・もしかして自分がエバだったかもしれないという・・・。
あんな治安が悪いなか、派手な顔とむちむちしたボディラインをさらして歩き回るのは危険だーとはらはらしてしまったよ。
文字どおり身体を張った調査は、映画的な盛り上がりを見せて、手に汗握らせる。

これってアメリカやメキシコにこんなひどい人たちがいる!というだけの話じゃないよね・・・。
ローレンが「これも!このTVも!皆メキシコで作られた物なのに!」と憤るシーンがあるけれど、アメリカで普通に文化的な生活している人からしたら「だから何?」「関係ない」という感じで、ローレンが何に怒っているのかよく伝わらないだろう。
私たちだって、外国産の安い食品や雑貨が、どのように生産されているのかいちいち想像したりしないように・・・。
自分は労働者の側に感情移入して観ていたけど、気づかないうちに加害者側に加担しているのかもしれないのだ(映画の中で日本企業もちょこっと出てくるし)。

最初はローレンの書き上げた記事を絶賛していた上司ジョージが、上院議員や企業に圧力をかけられて、「もう調査報道の時代じゃない」「大切なのは自由貿易、グローバル化、経済発展だ」と言う。
なんだか・・・こつこつと真面目に働いていればいつかはむくわれる、誠心誠意尽くせば分かってもらえる・・・みたいな価値観が、粉々に壊れて踏みつけられて捨てられて、あぁいったいどう生きればいいんだろう?とか考えちゃった。
映画はそれなりに収まってラストを迎えるけど、現実は続く・・・。

ボーダータウン 報道されない殺人者
Bordertown

(2007年 アメリカ)
監督・脚本/グレゴリー・ナヴァ
出演/ジェニファー・ロペス(ローレン)
   アントニオ・バンデラス(ディアス)
   マーティン・シーン(ジョージ・モーガン)
   マヤ・ザパタ(エバ)
   フアネス
公式サイト

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