« 雲南の花嫁 | トップページ | 雲南の少女 ルオマの初恋 »

白い馬の季節

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

砂漠化していく内モンゴルの草原で、毎日のように羊が飢えて死んでいく。かつての放牧地は草原保護のために鉄条網で囲われ、小学生の息子フフーの学費を払うことさえできず、あとは馬を売って町へ出ていくしかないと妻インジドマーが訴えるが、ウルゲンはどうしても遊牧民としての誇りと生活を捨てることができない。

思ったこと

Shiroiuma01哀切な・・・実に哀切な、胸がしめつけられるような気持ち。
何世代にもわたって羊を放牧してきたモンゴルの草原が、今失われようとしている。
その原因は干魃や強風、羊の過放牧、人口増加や農地の拡大などがからみ合っているらしい。
もう今までのような暮らしは続けていけない、ウルゲンも頭では本当は分かっているのだと思う、ただ身体が拒否してしまうのだろう。
草原で馬や羊とともに暮らすのが、モンゴル民族としてのアイデンティティだから・・・。
貧しさのために学校に行けなくて泣いているフフーは可哀想だし、草原の暮らしを捨てて他の皆のように町へ行こうというインジドマーの提案は現実的だ。
しかし、ウルゲンはいくら頭が古いと言われようと、そのようにしか生きられない。
適応力のある人や、次世代の子供たちは、難なく町の人間になっていくのかもしれない。
時代の流れなのだからしょうがないと思いつつも、どうしようもない哀しみで胸がいっぱいになる。
警察に連れて行かれたウルゲンが、壁のカレンダーを眺めるうちに夢見た、緑の草原を駆け抜ける馬たちの勇壮な姿が涙でくもる。

映画はモンゴルの話だけど、厳しい変化にさらされている現代社会では、あちこちで似たようなことが起きているんだろうなぁ〜などと考えた。
自分自身を柔軟に変化させていくのが生き延びる道・・・だけど、そんなふうにできない、不器用な人だってたくさんいるんだ。
“時代遅れ”なのかもしれないけど、苦労するだろうけど、器用な人が早々に手放してしまった貴いものもそこには残っている(画家ビリグが最後に言っていたのはそういうことだろう)。

インジドマーのいるゲルに、羊の皮を買いに来た商売人のトゴー。
「普通なら1枚10元だが、奥さんになら1枚11元でいいよ」と言う。
私は相場も何も知らないが、こいつ絶対に間で暴利をとっている!と確信して、やきもきやきもき。
でも素朴なインジドマーは「値段なんて見当もつかないわ」と喜んで全部売ってしまうのだ。

トゴーに「トラック運転手にヨーグルトでも売ったほうが余程金になる」と言われたインジドマーは、牛にがらがらと台車を引かせて、街道沿いにたたずむ。
通り過ぎるトラックに手を振って「止まってー!」「新鮮なヨーグルトがありますー」と必死に叫ぶが、売れようはずもない。
私が映画の中に入っていって、「おいしいヨーグルト」などと書いたのぼりか何かを作ってあげたくてたまんなかったー!!
そのうち、顔見知りの酒造会社の男が通りかかり、やっとヨーグルトを買ってくれるのだが、ここでもやはり「いくらか決めてください。値段なんて分からないから」。
そ、素朴過ぎるー・・・涙が出ちゃうくらい。

インジドマーは芯の強い美しい女性だった。
酒造会社の男に言う、「偶然出会ったすべての馬に乗ろうなんてダメよ」というセリフにはハッとさせられた。
町に移り住むことで、ウルゲンもインドジマーもまた変わっていくんだろうなぁ・・・。
彼らの将来に幸あることを願ってやまない。

白い馬の季節
季風中的馬/Season of the Horse

(2005年  中国)
監督・脚本・出演/ニンツァイ(ウルゲン)
出演/ナーレンホア(インジドマー)
   チャン・ランティエン(ツァオ)
公式サイト

|

« 雲南の花嫁 | トップページ | 雲南の少女 ルオマの初恋 »

中国映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/23401/26360523

この記事へのトラックバック一覧です: 白い馬の季節:

« 雲南の花嫁 | トップページ | 雲南の少女 ルオマの初恋 »