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歩いても 歩いても

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

横山良多は、妻・ゆかりとその連れ子・あつしの3人で実家を訪れた。すでに姉の一家も来ており、たくさんの料理を準備して待っていた母、数年前に自宅の医院を閉めた父とともに、食卓を囲む。今日は15年前に海で死んだ長男・純平の命日なのだ。

思ったこと

人んちの家庭事情を超のぞいちゃった!
そして、まるで自分もその一員であるかのような気分を味わった。
どこにでもありふれている家族の景色のようでいて、実は自分の属している場所以外の様子をじっくり見ることなんてできない・・・。
だって自分がそこに存在するだけで場に影響を与えるし、自分がどう振舞うかも決めなきゃいけないし。
透明人間になった気分で無責任に眺める・・・こういうのこそ私が映画に求めている感触だ。
もちろん、血わき肉踊るスペクタクルというような路線も楽しいけどね。

樹木希林とYOUがふたりで台所に立ち、次から次へとたっぷり料理を作っていく。
なかでもすこぶるおいしそうだったのが、とうもろこしの掻き揚げ!!
こんなん初めて見た。
食べてみたい・・・だけどパチンパチンはじけるのが恐ろしくて自分では作れない・・・。

縁側、低いテーブル、ごちゃごちゃと物があふれた棚、狭い台所、タイルがはがれてくたびれたお風呂・・・まるで自分のいなかを見ているよう。
そこで飛び交う言葉もごくありふれていて、くすっと笑えて、横から垣間見ただけだったら「平凡だけど和やかで幸せそうな一家だねー」って思うだけだろう。
でも、どんな平凡な家にも、抑えつけられた気持ちが隠れている。
何も派手な事件が起こらない1日でも、個々人の感情は大きく揺れ動いている。

「あんなくだらない奴を助けるために、なぜ純平が死ななきゃならなかったんだ!」
亡くなった人の近親者にとっては、15年経っても傷は生々しいまま。
折にふれ、寄せては返す波のように表面に浮かび上がってくる。
・・・そして助けられた人にとっても、重い人生になるんだなぁとつくづく思ってしまった。
のびのびとデブって汗かいて就職に失敗してもいられないかのような・・・。
期待を一身に背負ったまま亡くなってしまった子供は、永遠に完全無欠の存在だから。

樹木希林は、小さな身体でちょこちょこと動き回る姿がかわいいし、いかにも人がよさそうな感じ。
やさしくて世話焼きな母親のあたたかさの裏から、どろどろと冷たく黒くうずまいている毒が時折見える。
決して悪い人じゃない、やさしいお祖母ちゃんであることに変わりはない、だからこそ人って恐ろしい。
まるで自分の肉親に対するように、思慕と嫌悪感が同時に湧き上がってくる。
実際に存在する人物が、すぐ目の前で息づいているかのようだったー。
それに比べると、プライドが高くて偏屈なおじいちゃんはカワイイよな・・・。

良多が抱く両親への反発、実家に帰るのがうっとうしい気持ち。
でも決して捨てられない、逃げられない・・・そしていつもちょっぴり後悔が残ってしまうもの。
リアルな家族への思いが静かにそこにある。

歩いても 歩いても
(2007年 日本)
監督・脚本/是枝裕和
音楽/ゴンチチ
出演/阿部寛(横山良多)
   夏川結衣(ゆかり)
   田中祥平(あつし)
   樹木希林(横山とし子)
   原田芳雄(横山恭平)
   YOU(ちなみ)
   高橋和也(信夫)
公式サイト

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