« ショーガ | トップページ | ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢 »

バシールとワルツを

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

アリ・フォルマンは、20年前にレバノン戦争に従軍していたときの記憶がほとんどなかったが、当時のことを悪夢にみるというボアズの話をきっかけに、フラッシュバックを体験した。ベイルートで虐殺事件が起きたとき自分は何をしていたのか・・・当時の仲間らを訪ねて話を聞き、だんだんと記憶を取り戻していく。

思ったこと

い、犬! 犬コワ〜イ!
目が爛々と光り全身に怒りをたぎらせた26匹の犬たちが、あらゆるものを蹴立てて、こちらに向かって走ってくる!
チワワにさえびくびくしてしまう私は恐怖にひきつると同時に、アニメーションの躍動感にがっちりと捕らえられてしまったオープニングだ。
そして、なぜ“26匹”なのか、という理由に強いインパクトを与えられたときから、主人公の心の迷宮へと一緒に出発することになる。

リアルで細密な背景のなか、彩色した木版画みたいな質感の人物が動き喋るアニメーション。
実在らしき人物が次々と出てくるし、内容としてはシリアスなドキュメンタリーなのだけど、何故アニメという表現方法なのか・・・昔の戦場を回想していく方式で、心の中に存在しているものまで含んだ映像を描き出すこと、凄惨な光景を一歩引いて冷静に見られるようにすること、が目的なのかな〜と思った。
冒頭の犬をはじめとし、幻想シーンは怖く美しく、アニメ的な快楽も十分味わえる。
タイトルの元にもなっているシーンは圧巻だ!

1982年、イスラエル軍はレバノンに侵攻してPLO(パレスチナ解放機構)と戦った。
そしてベイルートのサブラ・シャティーラ難民キャンプで、ファランヘ党により民間人を含む大量虐殺事件が起こる。
バシールとは、親イスラエルだが暗殺されてしまったレバノンのバシール・ジェマイエル大統領のことだ。
私は歴史背景を全然分かってないまま観たのだが、ところどころ理解が追いつかないところがあっても、全体的にはグッと集中力をつかまれたままだった。

語り手で監督でもあるアリ・フォルマンは、自分の記憶が消えている謎を探っていく。
そこから何が出てくるのか・・・とてつもなく怖ろしいものが隠れているのではないか・・・でも知らないままではいられないミステリーだ。
人間の記憶って本当に不思議。

断片的に語られていくエピソードが、戦場体験がそれぞれの心に刻印したものをうかがわせる。
家族連れが乗ったベンツを蜂の巣にした男の話。
自分だけが生き残ってしまったことに罪悪感を抱き続ける男の話。
周りの光景に対して映画を見ているかのように距離を置き自己防衛していたカメラマンが、あるとき悲惨な状況にある馬たちを目にして、いきなりすべてが現実として迫ってきたという話・・・。

戦争という異常な場では、強者に見えるほうもひどい恐怖と混乱に陥っている。
被害者になるのももちろんイヤだけど、自分がいつ加害者側に回るかも分からない、直接の加害者にならなくとも傍観者や幇助者になっているかもしれない・・・という恐ろしさをひしひしと感じた。
イスラエルって、女性にも徴兵があるんだよねぇ・・・。
こんなことは感じたくない、だから、だから戦争のない世界をひたすら願うしかない。

バシールとワルツを
Vals im Bashir/Waltz with Bashir

(2008年 イスラエル/フランス/ドイツ)
監督・声/アリ・フォルマン
声/ロン・ベニ・イシャイ
  ロニー・ダヤグ
  ドロール・ハラジ
  イェヘズケル・ラザロフ(カルミ)
  ミッキー・レオン(ボアズ)
公式サイト

|

« ショーガ | トップページ | ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢 »

イスラエル映画」カテゴリの記事

ドイツ映画」カテゴリの記事

フランス映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/23401/25827845

この記事へのトラックバック一覧です: バシールとワルツを:

« ショーガ | トップページ | ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢 »