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さよなら。いつかわかること

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

妻グレイスがアメリカ陸軍の一員としてイラクへ行っている間、シカゴで暮らすスタンレーと12才の長女ハイディ、8才の次女ドーン。ある日、グレイスの訃報が届く。スタンレーは事実を娘たちに伝えることができないまま、3人で衝動的な旅に出る。

思ったこと

スタンレーの丸まった猫背、覇気のない歩き方、どんよりとしたまなざし。
冒頭、職場ホームストアで従業員たちと円陣を組んで「H!O!M!E!ストア!」「お客様が」「第一!!」「お客様が」「第一!!」と気合を入れるところはちょっと笑っちゃったんだけど、決して、やりがいをもって生き生きと仕事をしているような雰囲気は感じられない。
家族と離れてイラクにいる妻のことが心配な毎日なのだろう。
そして、彼自身も若い頃軍隊に入ったが、近視がバレて除隊、その頃知り合った妻だけがイラクに行っているという状態に、忸怩たる思いを抱えているのだろう。

スタンレーは妻の死を、子供たちにちゃんと伝えることができない。
しらじらしくはしゃいだふりをして出かけ、仕事も学校も休んで実家に寄ったあと、ドーンが希望するままフロリダのテーマパーク“魔法の庭”を目指す。
腰が据わっていない情けない姿だけど・・・子供たちにどう話せばいいか分からないだけでなく、言葉に出すことで事実として確定させるのが恐かったのかも。
弱い人だよね・・・その弱さはすごく身近に感じもするが・・・。

娘ふたりは、それぞれ違うタイプのかわいらしさ。
姉ハイディは理知的、妹ドーンは天真爛漫。
車の中でどつきあったり、うるさく騒ぐ妹に姉がイラついたりしながら、いつの間にか頬を寄せ合って眠っているところなんて、いかにもそこらにいそうな本当の姉妹みたい〜。
ドーンは、毎日同じ時間に腕時計のアラームを鳴らし、遠くイラクにいる母と思い合うというけなげな姿を見せる(でもなんでドーンだけ?)。
ハイディは12歳半、禁止されているイラクについてのTVニュースもこっそり見るし、父の様子がおかしいことに気づく冷静さと賢さをもっている。
私は、スタンレーが事実を隠してごまかしている時間が子供たちを傷つけるのではないか・・・と心配でやきもきした。
早く3人で感情を分かち合ってほしかった。
今では大人だって弱いということを十分知っているけれど、小さいうちは許容できないのではないかと思って・・・12歳は微妙なお年頃だしな・・・。

しかし、妻/母グレイスが単なる事故や病気ではなく“軍人としてイラクで死んだ”という設定なのだから、それに対するスタンスがもう少しはっきり描かれていてもよかったのではないか。
スタンレーは子供たちにイラクについてのTVニュースを見ることを禁じ、イラク情勢に懐疑的な弟に拒絶的な態度をとり、戦争への疑問を発した娘たちに「テレビで言っていることが本当とは限らない」「自分が正しいと信じなくてはならないときがある」と語る。
“イラク戦争の大義”とはスタンレーの心を守る砦なのかもしれないけれど、それはそのままでよかったのか・・・という気持ちが釈然としないまま残った。
戦争に命を捧げることを美化しているようにもとれるなーと思って。
いやでもさらに考えると、個人的な悲しみと理念としての大義の間で混乱している人の姿で、白黒つけずに、観ているこちら側の心を波立たせるのが狙いなのかも・・・うーむ。

さよなら。いつかわかること
Grace is Gone

(2007年 アメリカ)
監督/ジェームズ・C・ストラウス
音楽/クリント・イーストウッド
出演/ジョン・キューザック(スタンレー)
   シェラン・オキーフ(ハイディ)
   グレイシー・ベドナルジク(ドーン)
   アレッサンドロ・ニヴォラ(ジョン)
公式サイト

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