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ミリキタニの猫

お気に入り度 ★★★☆☆

こんな話

ニューヨークの路上で絵を描いて売る、80歳を越えたホームレスの男、日系人のジミー・ツトム・ミリキタニ。彼に興味を持って撮影を進めていたリンダ・ハッテンドーフは、9・11後にミリキタニを保護して家に住まわせる。第二次世界大戦時には強制収容所に入れられアメリカ市民権を奪われていたミリキタニの過去が掘り起こされるドキュメンタリー。

思ったこと

ミリキタニというのが“三力谷”という日本の名字だとは予想外だったよ。
ホームレス状態とはいえ、絵の対価としてしか決して金を受け取らないミリキタニ。
強制収容所やヒロシマの絵を何枚も描き続けるミリキタニ。
風変わりなマイノリティー人種の男を通して過去の不幸な歴史を見つめ直すアメリカの良心、というコンセプトのドキュメンタリーなんだな〜・・・とわりと冷めた目で観始めたのだが、監督であるリンダがミリキタニを同居させて深くコミットし、彼の人となりや過去がだんだんと明らかになっていくにつれ、その人生に引き込まれていった。

ジミー・ツトム・ミリキタニは1920年にカリフォルニアで生まれた日系2世なのだが、3〜18才の間は広島で育ち、軍国主義の日本を逃れて再度アメリカに渡ると、ほどなく日米が開戦する。
そして、敵性外国人としてツールレイク強制収容所へ。
太平洋戦争のときにアメリカにいた日系人たちがどういう運命をたどっていたのか、あまり考えたことがなかった自分に気付く。
そして現在、9・11後には、アラブ人差別という同じことが起こっている。
歴史から学ぶことで、不幸と憎悪の循環をこれ以上繰り返さないよう、人類は進化していけると信じたいけど・・・。

かつて剥奪されたアメリカ市民権は回復されていたのだが、連絡不行き届きでミリキタニはずっと知らないままだったということが分かる。
生きているかどうかも分からなかった実の姉ジャニスと、50年ぶりに再会する。
「アメリカの世話にはならない!」とずっと頑なだったミリキタニだが、福祉施設で絵の先生として迎え入れられる。
そんな積み重ねのうちに、何十年も心の中に黒々とわだかまっていた憎しみが、だんだんとほどけていく様子に目頭が熱くなります。
ツールレイク強制収容所の跡を訪れて絵を描くミリキタニは、随分と落ち着いて見える。
それもこれも、リンダの尽力のおかげ。
長くつらい時を過ごし、80才を越えたミリキタニの人生が、人との関わりによって変わっていくのだ。
実際、肉親でも友人でもなかったホームレスを家に入れて、その一筋縄ではいかない境遇と心を解きほぐしていくなんて、そうそうできることではないよなぁ・・・。

ミリキタニの絵は、のびのびとした描線とハッとさせられる色使いで、独特な魅力がある。
手持ちカメラによってちらちらと視点が移動する映像なので、絵をもっとじっくり見せてくれ〜!と、そのへんがちょっぴり物足りなかったよ。

それと、ミリキタニはちょっとびっくりしてしまうくらい、英語が上手くない。
英語で喋っているにもかかわらず英語の字幕が出るということは、アメリカ人にとっても相当聞き取りにくいんだろう。
日本の歌をよく歌っているし。
人生のほとんどの時をアメリカで過ごしているとはいえ、まともな市民として扱われず、きちんと学べる環境にないと、言葉って上手にならないのだなぁ・・・という点も衝撃でした。

ミリキタニの猫
The Cats of Mirikitani

(2006年 アメリカ)
監督/リンダ・ハッテンドーフ
出演/ジミー・ツトム・ミリキタニ
   リンダ・ハッテンドーフ
   ロジャー・シモムラ
   ジャニス・ミリキタニ
公式サイト

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