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誰も知らない

お気に入り度 ★★★★☆

こんな話

アパートに引っ越してきて大家に挨拶する二人、母けい子と小学6年と自己紹介する明。実は他にも3人の子供たちを隠しており、それぞれ父親が異なり、誰も学校に通ったことがなかった。母が毎日仕事に行く間、きょうだいは家の中だけで過ごし、長男の明が買い物や食事の用意をする。そのうち、母が「出張」と称して家を長く空けるようになり、子供たちだけで生活する。

思ったこと

このきょうだいが実在して、今このときも社会からこぼれ落ちたまま生きているような気がして、観終わって家に帰ってからもずっと気になってしょうがなかった。
なんだか本当のことみたいな手触りを感じる映画だった。
実際に起こった事件を題材にしているということだが、そういうことだけでなく、登場する人々の息づかいが間近に迫ってきた。
後半ではずっと「誰か見つけて!」という祈りが頭の中をぐるぐる回り続けた。

どういう話か事前にだいたい知っていたので、どんな鬼母が出てくるのかと思いきや、YOU演じる母はほがらかで、子供たちと仲良くて、ちゃんと向き合って会話しているように見える。
小さな子供がたくさんいるとアパートが借りられないからという理由で、茂とゆきはスーツケースの中に隠して運ばれるという随分ひどい扱いなのに、いたずらをしているような雰囲気というか、共犯関係を楽しんでいるみたい。
子供たちは皆いきいきと笑っていて、とてもかわいく、大きい二人が家事を分担している様子もほほえましい。
ちょっと拍子抜けして、仲良し家族だな〜くらいの気分で観ていたら、ふいにある場面で冷水を浴びせられる。
おずおずと「学校に行きたいんだけど」と言う京子に、「学校なんか行かなくたっていいよ。何にもいいことないんだから」と母が一蹴するのだ。
そっか・・・最初に明が「小学6年です」と言ってたからそのうち学校に行くのだろうとなんとなく思ってたら、このまま行かせてもらえないんだ・・・。

この母は、子供への愛情がない鬼母なのではなく、自分のことで頭がいっぱいになって現実の責任から目をそらしてしまう成熟していない人だったのだ。
小さな子供たちに必要なのは友達のような母ではなくて、守ってくれる保護者なのだ。
「皆をよろしくね。頼りにしてるよ」という明に向けられた優しげな言葉。
長男はしっかりしているから大丈夫、そのうち落ち着いたら迎えに行くのだから大丈夫、という甘い考えだったのだろう。
そして何が起こったか知ったら、きっと「こんなことになるとは思わなかった・・・」と泣くのだろう。

きょうだいの中では保護者的役割を演じてしっかりして見える明だけど、声をかけられて中学校の野球チームでプレイしているときには、その身体の小ささに改めて気付かされる。

しかしですね、この映画では子供たちをきれいに描き過ぎている気がする。
小さい子たちも聞き分けがよくて、かわいかったりけなげだったりする姿ばかり見せているけど、実際はこんなもんじゃ済まないよね〜。
いらいらした明がきつく当たったりしたときもあったとはいえ、まだ子供なのだもの、弟妹の面倒をみる重圧感をもてあまし、もっとひどい言動に出てもおかしくなかった。
明とゲーセンで仲良くなった同年代の男の子たちが家に入り浸るようになったときも、もっといや〜な感じの展開を予想していたんだが・・・。
ゆきを羽田に連れていくシーンも、ちょっときれいなエピソードに見える・・・。
「こんなにいい子たちなのに可哀想」と思わせるような話になっているのが違和感なのかな。
だって、たとえそれほどいい子じゃなくたって、子供をこんな状況においてはいけないんだから。
見てる分にはつらさが少ないといえるが、なんだか現実のやるせなさがオブラートにくるまれてしまっているようで、ちょっと残念。

誰も知らない
(2004年 日本)
監督・脚本/是枝裕和
音楽/ゴンチチ
出演/柳楽優弥(明)
   YOU(母:福島けい子)
   北浦愛(京子)
   木村飛影(茂)
   清水萌々子(ゆき)
   韓英恵(紗希)
公式サイト

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